
障がい者の法定雇用率の引き上げや働き方の多様化が進む中、株式会社NTTデータ先端技術では、特例子会社だけに頼らない、一般の事業部門での「分散型雇用」を推進しています。
精神・発達障害のある社員を「戦力」として迎え入れ、わずか2年で定着・拡大させた背景にはどのような戦略があったのか。また、そのプロセスにおいて外部専門機関であるKaienをどのように活用したのか。プロジェクトを主導した人事総務部の鳥山美佐様にお話を伺いました。
*この記事中では「障害」を「障がい」と表記します(名称除く)
まず、本社での障がい者雇用(分散型雇用)に取り組まれた背景を教えてください。
鳥山様(以下、敬称略):これまで当社では、グループの特例子会社である「株式会社NTTデータだいち」の協力を得て、身体に障がいがある方の雇用を中心に取り組んできました。
しかし、法定雇用率の段階的な引き上げに加え、身体障がいのある既存社員における高齢化や退職、、さらには事業拡大に伴う社員数の増加により、これまでの体制だけでは雇用率を維持することが難しくなってきました。特例子会社だけに頼るのではなく、本社でも毎年1〜2名のペースで採用を増やしていく必要に迫られていたのが正直なところです。
障がい者雇用というと、特定の部署に業務を集約する「集合型」も一般的ですが、なぜあえて「分散型」を選ばれたのでしょうか?
鳥山:当社の場合、選択肢が事実上「分散型」に限られていたという事情があります。
間接業務は既にグループの別会社に依頼済みで、集合型雇用を増やすとしても社内で新たに業務を集めて「業務センター」のようなものを作る余地がほとんどありませんでした。
そのため、各事業部門の中に席を設け、一般社員と共に働く「分散型雇用」に挑戦していくことに決めました。
「分散型」は現場の理解や業務切り出しの難易度が高いと言われます。開始にあたって課題はありましたか?
鳥山:はい。それまで当社には、発達障害の特性をオープンにして働いている方の雇用実績がなく、採用やマネジメントのノウハウが社内に全くありませんでした。
そこで、グループ会社での成功事例をリサーチした際にKaienさんの存在を知り、社内にノウハウが蓄積されるまでの間、専門的な伴走支援をお願いすることにしました。私たちだけで手探りで進めるよりも、専門家の知見を借りるほうが確実だと判断しました。
具体的に、Kaienのサービスはどのような場面で役立ちましたか?
鳥山:採用プロセスの設計から定着支援まで、一貫してサポートいただいています。
特に助かったのは、最初の1年目の取り組みです。いきなり全社に広げるのではなく、まずは私たち人事部門自身が採用し、成功事例を作ることから始めました。
その際、Kaienさんには「どのような業務なら任せられるか」「どう求人票を書けばよいか」という段階から相談に乗っていただきました。
具体的には、キャリア採用チームのアシスタント業務として、スカウトメールの送信や面接の日程調整などを切り出しました。これらは正確性が求められる重要な業務ですが、Kaienさんの助言を受けながら「人事経験があり、PCスキルがある方」という要件を明確にしたことで、経験豊富な方をスムーズに採用できました。
人事での成功を経て、2年目からは事業部門へ展開されています。現場への提案はどのように進めましたか?
鳥山:現場に「障がい者雇用をお願いします」と頼み込むやり方はしていません。それでは「余裕がない」「わざわざ仕事を作るのは大変」と敬遠されてしまいます。
代わりに、退職や派遣契約の満了などで「欠員補充」のニーズが発生したタイミングを狙って、「その採用、障がい者雇用でやってみませんか?」と提案するようにしました。これなら、もともと必要な人員と予算ですし、既存の業務を引き継ぐ形になるので、現場も受け入れやすいのです。
実際、ITコンサルティング事業部や内部統制といった専門性の高い部署でも、スケジュール管理や計数管理、承認プロセスのチェックといった業務で採用が決まりました。Kaienさんには、こうした現場のニーズを丁寧にヒアリングしていただき、マッチする人材を紹介してもらっています。
入社後の「定着」については、どのような工夫をされていますか?
鳥山:定着には、ご本人への配慮だけでなく「受け入れる現場側の安心感」が不可欠です。
そのために活用しているのが、Kaienさんによる「事前の職場勉強会」です。入社直前に受け入れ部署のメンバー全員を集め、これから入社する方の特性や配慮事項について、専門家の視点から解説していただきます。
「どう接すればいいか分からない」という漠然とした不安を解消できるため、現場からも好評です。
また、入社後半年間は定期面談や、上司向けの相談対応などの定着支援サービスを利用しています。上司も初めての経験で不安を持っていますから、「困ったら専門家に相談できる」という環境があることは、マネジメントの負担軽減に大きく役立っています。
制度面での特徴はありますか?
鳥山:給与テーブルや昇給制度は、一般社員と全く同じものを適用しています。合理的配慮は行いますが、業務への責任や期待値は区別しません。
また、当社は全社的にリモートワークやフルフレックスを推奨しており、これが障がいのある社員にとっても「働きやすさ」につながっています。通勤のストレスを軽減したり、静かな環境で集中したりと、ご自身の特性に合わせて柔軟に働ける環境が整っていたことも、定着の大きな要因だと感じています。

最後に、今後の展望をお聞かせください。
鳥山:取り組み開始から3年で6名の採用・定着を実現しましたが、最近では現場から「障がい者雇用で人を採用したい」と指名が入るケースも出てきました。実際に活躍している社員の姿を見て、現場の意識がポジティブに変わってきている手応えがあります。
Kaienさんのような専門機関の力を借りながら、「法定雇用率のため」という義務感ではなく、「事業に必要な戦力」として多様な人材が活躍できる組織づくりを、これからも進めていきたいと考えています。

株式会社NTTデータ先端技術
人事総務部 ウェルビーイング推進担当 厚生・健康/障害者雇用担当部長
鳥山 美佐 様