島津製作所は、1875年に京都で創業し、150年近い歴史を持つ日本を代表する精密機器メーカー。「科学技術で社会に貢献する」という社是のもと、分析計測・医用・産業・航空の4つの分野でグローバルに事業を展開しています。
特に分析計測機器の分野では世界有数のシェアを誇り、2002年には当時社員であった田中耕一氏がノーベル化学賞を受賞したことで、その高い技術力が広く知られることとなりました。近年は「人と地球の健康」への願いを実現するため、がんの超早期診断や脱炭素に向けたエネルギー開発など、社会課題を解決する最先端技術の研究・開発に注力しています。
2002年から、本格的に障害者雇用を進めてきた島津製作所の取り組みや今後の展望を、人事部の奥 寛幸様と加藤 真也様に伺いました。

2025年12月実施の「SHIMADZU DE&I Week」展示前にて
始まりは「雇入れ計画作成命令」。逆境から始まった本格的改革と「特例子会社を作らない」という選択。
■障害者雇用の取り組みの経緯や背景を教えてください
奥様(以下、敬称略):島津製作所の障害者雇用の歴史は、決して順風満帆な滑り出しではありませんでした。2002年、行政より「障害者雇入れ計画作成命令」を受けたことがきっかけでした。
「場当たり的な対応」から脱却するため、専任担当者を配置。1年で計画を達成し、以降は雇用維持のため新規雇用を継続した上で、定着・戦力化に取り組んでいます。
多くの大企業が特例子会社を設立するなか、当社はあえてその道を選びませんでした。「汎用品を大量に作るビジネスではないからこそ、仕事を一箇所に集約するのではなく、障害のある方を各所に配置して全社員の理解を深める必要がある」と考えたのです。現場で一緒に働く文化づくりを目指しました。

現場が求める「専門スキル」人材採用を、Kaienの人材紹介サービスと進める。
■近年力をいれている精神・発達障害者の雇用の取り組みを教えてください。
奥:近年、求人の8〜9割を精神・発達障害のある方が占めるようになり、理系精密機器メーカーとして不可欠な 理系中心の「専門スキル」のある方の採用を進めています。
加藤:各職場からニーズを拾った上で募集をかけています。Kaienの人材紹介サービスを通じて、ITやAI関連の知識を持つ層へアプローチし、PC・ネットワーク管理・運用保守、機器の製図・図面改訂、経費精算などの業務を行っていただく方を採用しました。現在は、事務業務効率化・自動化などの業務を行っていただく方も募集しています。
奥:雇用率という数字に固執するのではなく、現場で認められる人材を配属すれば、結果として雇用率はついてくると考えています。
■採用後、受け入れ現場の反応や変化はありましたか?
奥:初めて精神・発達障害のある方を受け入れる部署には、当初「適切な配慮ができるのか」「安定して勤められるのか」といった不安もありました。しかし、実際の選考プロセスを通じて、その不安は払拭されていきました。
重視したのは、「実際に会って話すこと」と「成果物(ポートフォリオ)を確認すること」です。求職者の成果物を通じてコミュニケーションをとることで、現場担当者は「これだけの能力があるのか」とスキルの高さを直接肌で感じることができました。
加藤:現場からは、「マニュアルを自作してくれる社員がチームの財産になっている」 「他のチームメンバーと何ら変わりない。丁寧に仕事をしてくれる」などの声が上がっています。

■受け入れ現場では、どんなサポートをされていますか?
加藤:上司や外部支援機関、ジョブコーチ資格のある障がい者雇用担当者が定期的に面談を行ったり、日報に目を通したりしながら、報連相のしやすい環境を整えています。配慮内容は、入社前に受け入れ部門にも共有しています。外部支援機関との定着面談には、私も参加してモニタリングしています。
「配属部門向け入社前研修」で現場の不安を払拭。専門家の伴走がもたらす安心感。
■Kaienの人材紹介サービスを利用されている理由を教えてください。
奥:京都企業複数社で定期的に行っている勉強会で、Kaienという障害者雇用の専門家の存在を知りました。障害者採用・雇用を進めるためには専門家の存在が大きいと考えました。
また、現場からは、専門的なスキルの採用要求が増えています。ITやAI関連への知識・スキルを持った求職者がKaienには多く見受けられたのが決め手です。
加藤:入社が決まった受け入れ現場向けの「配属部門向け入社前研修」もポイントです。障害の基礎知識、接し方のポイント、入社予定者の強み・障害特性・配慮事項を、Kaienスタッフが受け入れ現場にレクチャーしてくれます。一般的な研修は、いろいろな障害の情報を網羅するようなものが多い中、「配属部門向け入社前研修」は入社予定者に特化してレクチャーしてくれるので、入社前の現場の不安低減に役だっています。
そのほか、求人作成のサポートもありがたいです。特に専門スキルの求人では、記載内容などが人事部門でうまく言語化できないこともありますが、Kaienが求職者のマッチングにつながる求人を作成してくれていますね。

「戦力化」と「育成」を軸に、京都から広げる障害者雇用の輪。
■今後の展望を教えてください。
奥:一部の部署に偏っている雇用を全国の拠点へと広げ、全社で一人でも多くの受け入れを目指します。「絶対にどの部門にも、お任せできる仕事はある」と思うんです。
加藤:私が「ハブ」となって社内での雇用を作り出していきたいですね。
奥:今後は、「戦力化」と「育成」を視野に入れないと、障害のある方の雇用は難しくなると思っています。そのためには、当社やグループ会社だけでの活動では難しく、行政・京都企業と連携して「京都全体で障がい者雇用の底上げ」をできるようにしていきたいです。
実際、発達障害などの脳神経に多様性のある人財が、ふさわしい職場と出会うためのジョブマッチングを行うプラットフォームである、「ニューロダイバーシティ京都地域連携プロジェクト(ND Kyoto)」なども行っています。
また、障害者雇用の位置づけを「組織全体の生産性向上」に繋がる仕組み・体制作りも行っていきたいですね。

インタビュー協力:
株式会社島津製作所 人事部 副部長 奥 寛幸様/係長 企業在籍型ジョブコーチ 加藤 真也様
Kaienが行ったサポート内容