【障害者雇用】よくあるトラブルとその対策|「もめない」職場づくりのヒント

はじめに:障害者雇用の担当者様、このようなお悩みはありませんか?

「せっかく採用したのに、数ヶ月で辞めてしまった…」 「受け入れ部署から『どう対応すればいいかわからない』と不満の声が上がっている」 「体調不良による欠勤が多く、周囲の社員に負担がかかっている」

障害者雇用を進める中で、このような課題に直面する担当者の方は少なくありません。
特に精神・発達障害の方の雇用では、コミュニケーションのすれ違いや体調管理の難しさから、トラブルや早期離職につながるケースがあります。

しかし、これらの問題は「障害があるから仕方ない」と諦めるものではありません。
適切な予防策とサポート体制を整えることで、トラブルを未然に防ぎ、障害のある方が長期にわたって活躍できる職場環境を築くことは十分に可能です。

この記事では、障害者雇用の現場でよくあるトラブル事例とその背景、そして具体的な解決策を解説します。
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)も職場定着のための取組を発信していますが、この記事ではその取り組みを、より身近な事例に沿って考えていきます。

このページの目次
障害者雇用でよくある「7つのトラブル」とその背景
 1. 勤怠が不安定で周囲に負担がかかる
 2. 指導後の感情的な反応で職場の雰囲気が悪化する
 3. 業務に対する自己評価と他者評価のズレで摩擦が生じる
 4. 情報過多でフリーズしてしまう
 5. 業務アサインのミスマッチによるアウトプット低迷と自信喪失
 6. 障害者社員同士の摩擦 
 7. 「わがまま」と誤解される配慮の要求

トラブル解決のための具体的な対策
 【勤怠・体調のトラブル対策】 個別支援計画と支援機関との連携
 【ミスの多発には】〜「適材適所」の業務アサインを徹底する〜
 【人間関係・コミュニケーションの摩擦には】〜本人と周囲双方への「スキル指導」で円滑にする〜

成功事例:マニュアル作成で同僚間の摩擦が解消されたA社のケース

まとめ:トラブル予防と事後フォロー、そして専門機関との連携が成功の鍵

障害者雇用でよくある「7つのトラブル」とその背景

障害者雇用におけるトラブルは、いくつかのパターンに分けることができます。
ここでは、特に精神・発達障害のある方を雇用する際に起こりがちな7つの事例と、その根底にある原因を解説します。

トラブル解決のための具体的な対策

個別のトラブルにその場限りで対処するだけでなく、根本的な対策を講じることが重要です。
ここでは、上記に挙げたトラブルを解決するための具体的なアプローチをご紹介します。

【勤怠・体調のトラブル対策】 個別支援計画と支援機関との連携

  • 日報の活用:
    体調や業務の進捗などを定型フォーマットの日報で共有してもらうことで、本人も上司も変化のサインに早めに気づきやすくなります。
  • 体調管理への理解:
    勤怠が不安定な場合、早期回復のためには無理せず休むことが重要です。
    企業側が明確な方針を示し、周囲の社員に理解を促すことで、不満は解消されやすくなります。
  • 支援機関との連携:
    外部支援機関、産業医や保健師などの産業保健スタッフと連携し、社員の体調管理をサポートすることも重要です。
    専門家の視点から、体調の波に合わせたより適切なアドバイスや対策を講じることができます。
  • 定期的な振り返り面談:
    月に一度の定着面談で、上司とご本人で体調や業務を振り返ります。
    「自己評価」と「他者評価」を共有することで、ご本人の自己モニタリング能力向上を促します。

【ミスの多発には】〜「適材適所」の業務アサインを徹底する〜

採用前の面接実習での見極めも大切ですが、採用後にも業務を通して障害特性やスキル、強みを十分に把握し、それに合った業務を割り当てることが重要です。
例えば、特定の業務に集中できる力や、正確性が求められる作業など、本人の強みが発揮できる職務を切り出すことで、本人のモチベーション向上とミスの減少につながります。

【人間関係・コミュニケーションの摩擦には】〜本人と周囲双方への「スキル指導」で円滑にする〜

障害特性からくるコミュニケーションの課題は、単に「気を付けてね」と言うだけでは解決しません。
障害者ご本人、そして受け入れる社員双方へのスキル指導が効果的です。

  • ご本人への指導:
    • 自己理解を深める:
      自身の障害特性を理解し、どのような状況で感情的になったり、戸惑ったりするのかを客観的に把握してもらいます。
    • 伝え方を学ぶ(アサーション):
      指導を受けた際に反発してしまう、配慮の要求が「わがまま」と誤解されるといった課題に対し、「アサーション(自分も相手も尊重する自己表現)」のスキルを指導します。
      特に、「困った時にどう応答すればいいか」をアサーティブに伝える方法を、パターンとして覚えることは非常に有効です。
  • 周囲への指導:
    • 合理的配慮の理解:
      受け入れ部署の社員全員を対象とした研修を実施し、障害特性からくる言動や配慮の必要性を理解してもらいます。
      また、情報過多でフリーズするケースに対しては、一度に大量の情報を与えず、 指示は簡潔で具体的な言葉で伝えること、口頭だけでなく、視覚的にも情報を補足することなどを実践してもらうよう指導します。
    • 効果的な指導方法:
      指導する側も、否定するような言葉を使わず、「事象」と「具体的な改善策」をセットで伝える工夫が必要です。

成功事例:マニュアル作成で同僚間の摩擦が解消されたA社のケース

製造業のA社では、発達障害のある社員BさんとCさんが同じ部署に配属されました。
Bさんは「作業手順に強いこだわり」があり、Cさんは「新たな視点やアイデアで業務改善に貢献したい」という意欲が強いタイプだったため、業務の進め方を巡って小さな摩擦が度々起きていました。

担当者は、以下の2つの解決策を組み合わせて対応しました。

  • スキル指導: 担当者が双方から意見を聞き取る場を設け、それぞれの特性と主張の背景を理解させました。
  • 適材適所(業務改善): Bさんの「品質管理」とCさんの「効率化」という視点を掛け合わせ、新しい業務マニュアルを作成。

これにより、両者は互いの強みを認め合い、摩擦は解消され、チームにとってもより良いマニュアルが完成しました。

まとめ:トラブル予防と事後フォロー、そして専門機関との連携が成功の鍵

障害者雇用におけるトラブルは、適切な知識対策があれば予防・解決が可能です。
安定した雇用を実現するための基本は、適材適所のアサイン、ご本人と周囲へのスキル指導、「個別支援計画」に基づくきめ細やかなフォローアップです。

「自社でどう進めればいいかわからない」「トラブルの解決策が知りたい」
といったお悩みをお持ちの担当者様は、自社だけで悩みを抱え込まず、外部の専門機関と連携し、チーム全体で支援に取り組むことも、障害者雇用の成功につながります。


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この記事を書いた人

蟹江 美貴

株式会社Kaien 就労支援事業部 法人向けサービス担当
ブリッジコンサルタント

国際線CAやビジネスマナー講師を経て、EAP機関・ハローワーク・大手IT企業・メンタルクリニック等で、カウンセリングや研修業務に従事。多様な対人支援の現場を経験し、現在は主に障害者雇用の企業常駐支援(※)に取り組んでいる。
モットーは「障害者雇用は、マネジメントの原点を見つめ直す機会。誰もが活躍できる未来を、この一歩から。」

公認心理師/精神保健福祉士/キャリアコンサルタント(国家資格)/産業カウンセラー/SNSカウンセラー

企業常駐支援:専門スタッフが企業に常駐し、業務の切り出しから日々のマネジメントまで伴走支援します。Kaien独自のノウハウで、社員様が主体となって運営できる体制を構築し、「もめない・やめない・やすまない」障害者雇用を実現するサービスです。