【厚労省が規制検討】障害者雇用「代行ビジネス」のリスクとは?新ガイドラインの動向と本質的な自社雇用の進め方

法定雇用率の引き上げにともない、多くの企業が「障害のある方をどのように採用し、定着させるか」という課題に直面しています。その中で、ノウハウや人的リソースが不足している企業の間で広がっているのが、いわゆる「障害者雇用代行ビジネス」(農園型など)の利用です。

しかし現在、厚生労働省においてこの代行ビジネスに対する規制強化や、新たなガイドライン策定に向けた議論が本格化していることをご存知でしょうか。

本記事では、代行ビジネスが注目される背景と課題、国が検討している具体的な対策、そして企業が長期的に取るべき「本質的な自社雇用」へのステップについて解説します。

1.障害者雇用代行ビジネス(農園型など)の仕組みとは?

障害者雇用代行ビジネスとは、本来であれば自社で直接雇用し、自社の業務を一緒に行うべき障害者雇用を、一定の業者に費用を支払って代行してもらうビジネスモデルを指します。

具体的な業態は多岐にわたりますが、共通しているのは「自社とは離れた、業者が用意した場所で作業を行う」という点です。

  • 屋外農園: 畑で野菜を栽培するスタイル。
  • 屋内施設: 建物の中で、水耕栽培によりハーブなどを育てるスタイル。
  • サテライトオフィス: 事務的な作業を行うスタイル。

これらのサービスは、障害者雇用のノウハウがない企業にとって「場所や業務を丸ごと用意してもらえる」というメリットがあるように見えます。しかし、自社でマネジメントを行うのではなく、業者に「丸投げ」する形になりやすく、自社側が十分に管理・指示を行えていない実態が問題視されています。

2.なぜ問題視されている?厚生労働省が懸念する3つの課題

厚生労働省は、この代行ビジネスの広がりに対して主に3つの課題を指摘しています。

1. 業務の分離による「自分ごと化」の阻害

本来、障害者雇用の根底には「障害のある人もない人も、共に同じ場所で働き、共に暮らす」という「共生社会」の実現があります。 代行ビジネスを利用して業務や勤務場所を自社から完全に切り離してしまうと、企業側が障害者雇用を「自分ごと」として捉えづらくなります。「おカネで法定雇用率の数字をクリアすればいい」という姿勢になってしまい、共生社会の実現に向けた企業の歩みが止まってしまうのではないか、という点が問題視されています。

2. 労働者(本人)の成長機会の喪失

農業などの作業自体にやりがいを見出すことは素晴らしいことですが、問題はこの手法に甘え、本人が5年、10年と全く同じ単調な作業をずっと繰り返す状態になってしまうことです。 「人は経験を積むことで成長し、できる仕事も変わっていく」という前提において、そのキャリアアップや成長の機会を企業が適切に提供できているのか、という疑問が投げかけられています。

3. 成果物の社会的価値の不透明さ

屋外や屋内の栽培で収穫された野菜やハーブが、社内食堂で活用されるなど適切に消費されているケースもあります。しかし一部では、せっかく作った成果物が社会に流通せず、そのまま廃棄されてしまうケースも少なからず存在します。これでは、働いている障害者本人が「自分の仕事が社会に繋がっている」という労働のやりがいを感じづらくなってしまいます。

3.国が検討している「2つの具体的な対策(規制)」

こうした課題を受け、国(厚生労働省)では現在、主に2つの対策についての議論が進められています。

①「61報告」での内訳報告の義務化

すべての企業は、毎年6月1日時点での障害者雇用状況を国に報告する「61報告(ロクイチ報告)」の義務があります。この報告の際に、「代行ビジネスをどの程度利用しているか」という内訳の報告を求めるようにする議論が行われています(※代行業の利用自体を禁止するものではありません)。これにより、企業がどのような形態で雇用しているかの可視化が進むとみられます。

② 事業者(代行業者)向けガイドラインの策定

数ある代行業者の中には、真摯に運営している事業者もあれば、悪質な事業者も存在します。そこで、代行ビジネスを行う業者に対して、「最低限守るべきルール」や適正な運営基準を示すためのガイドラインを策定する議論が進められています。

4.Kaienからの提言:代行ビジネスは「ゴール」ではなく「ステップの1つ」

「自社にノウハウがない」「これまでに採用経験がない」という企業が、法定雇用率達成の強いプレッシャーや時間的制約から、一時的な選択肢として代行ビジネスを導入せざるを得ない状況があることは、私たちも十分に理解できます

しかし、それを「永続的なゴール」にしてしまうことには大きなリスクがあります。

高い費用を払わずに「自社雇用」を立ち上げる道はある

障害者雇用を自社内で進めることは、決して不可能なことではありません。 自分たちだけで抱え込まず、以下のような外部の資源を頼ることで、多額の費用を支払って代行ビジネスに依存し続けなくても、自社雇用を成功させるルートはたくさん存在します。

  • ハローワークへの相談
  • 地域の支援機関との連携
  • Kaienのような専門パートナーによる伴走支援

まずは代行ビジネスを「最初の第一歩(ステップ)」と位置づけつつも、並行して「自社で雇用を立ち上げ、業務を切り出し、戦力化していくにはどうすればいいか」というロードマップを描き、さまざまな可能性を試していくことが重要です。

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この記事を書いた人

大野順平

株式会社Kaien 就労支援事業部 法人向けサービス担当
ゼネラルマネージャー / シニアディレクター

2014年Kaien入社。採用支援、定着支援、社内啓発など、これまで20社以上の精神・発達障害人材の雇用推進プロジェクトに参画。

寄稿 :

月刊精神科「就労支援におけるneurodiversity」(2023年9月,科学評論社)
日経BP Human Capital Online連載記事「とんがった個性も活かしきる組織づくり

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