近年、障害者雇用において職種の多様化が広がっています。その一方で、どのような業務内容・あるいは雇用モデルであっても、多くの成功事例で共通しているいくつかのポイントがあるようです。そのなかでも、多くの障害者雇用担当者が最重要ポイントとして挙げるのが「支援機関との連携」です。
障害者雇用は、場面によっては対応に多くの時間を割く必要があったり、一定の知識や経験が求められる場合があります。それらの対応を自社のリソースのみで行おうとすると、企業の負担が大きくなってしまうでしょう。
政府では企業における障害者の安定雇用をサポートするための公的資源として様々な支援連携のスキームを構築しています。本記事では、これから本格的に障害者雇用を推し進めていきたいとお考えの担当者様へのご参考となるように、「支援機関との連携」にスポットを当てて、お役立てとなるような情報をお伝えしていきます。
Q1. 支援機関にはどのような種類がありますか?
障害者の就労を支援するための公的な支援機関には複数の種類がありますが、そのなかで最も関係性を重視すべきなのは「就労移行支援事業所」です。
就労移行支援事業所は、全国約3,000事業所で、年間約4万人の方が利用する「通所型」の福祉サービス事業所です。
企業等で働くことをを目指してる障害者が、就労に向けた準備やスキルを身に着けて、働き始めることを支援する目的で設立されました。
就労移行支援は、「職業訓練」と「就職活動支援」、そして「定着支援」の3つの機能を併せ持っています。就労移行支援の利用者は、最長2年間、職業訓練を受けることができます。一定期間、規則正しい生活リズムで職業訓練に通所する習慣を身につけ、 年間1.2万人が実際に就労へとステップしています。
Q2. 支援機関と連携すると、企業にはどのようなメリットがありますか?
結論からお伝えすると、支援機関と連携するメリットは以下の3点に集約されます。
- 採用活動:安定しており就労の準備が整った人材の採用につながる
- 雇用管理:適切な業務のアサインや、職場環境整備に必要な情報が手に入る
- 雇用定着:専門家のサポートを得ることで、雇用定着率が向上する
◇ 採用活動におけるメリット
多くの企業で雇用見極めのチェックポイントとして「生活リズムの安定」を重視しているのではないでしょうか。前述のとおり、就労移行支援の利用者は最長2年間の職業訓練を経て、就職活動をしています。支援者と連携を行うことで、ご本人の申告ベースではなく、事実ベースで生活リズムが安定しているかを確認することができる点が、採用活動における企業の最大のメリットとなるでしょう。
◇ 雇用管理におけるメリット
また、ひとことに障害といっても、必要な配慮や、適性に合った業務内容は千差万別です。雇用安定・戦力となり活躍してもらうためには、一人ひとりの個性を見極めることが重要です。就労移行支援では職業訓練や個別面談を通じて、利用者の障害特性や必要な配慮事項について熟知しているので(これを福祉の世界では「就労アセスメント」と言っています)、それらを採用時の環境整備は仕事のアサインに活用する点も大きなメリットとなります。
◇ 雇用定着におけるメリット
前述したとおり、就労移行支援は「雇用後の定着支援」という機能を併せ持っています。多くの場合、担当の支援者が定期的に職場に訪問し、ご本人との面談を行い、ご本人の不安や困り事をヒアリングし、適切なアドバイスを企業に行います。また、雇用の不調が発生した場合には、企業側から支援機関に相談を行うことで、通常企業のマネジメントだけでは実施が困難な、医療サービスや家族との連携などがしやすくなります。
Q3. どのようにすれば良い連携関係を構築することができますか?
では、このような効果的な連携関係を支援機関と結ぶためには、具体的にはどのようにすればよいのでしょうか。
おすすめのアプローチは「職場実習」の受入れです。就労移行支援の利用者は、企業等で働いた経験が少ないため、自分の適性が分からないなど、企業等で働くことに不安を持つケースが多くあります。「職場実習」は適性を確認したり、自己理解を進めるための良い機会提供となるため、多くの支援機関が実習を受け入れる企業を継続的に探しています。企業側としても、求職者との良い接点になり、実習参加者が実際に雇用に結びつくケースも少なくないので、Win-Winな仕組みとして多くの企業が取り入れている仕組みです。
東京都内にある企業でしたら、東京しごと財団が主催する職場体験実習面談会のご利用をお勧めします。支援機関と企業を結び付ける、ハブ的な機能になっており、効率的に支援機関と関係を構築するきっかけとなるでしょう。
Q4. 支援機関との連携について、企業側のデメリットはありますか?
支援機関との連携で、企業側にはデメリットはありません。公的な仕組みなので、費用負担も発生しません。
強いて言えば、支援機関との連携にかかる人的コストが、ある程度発生するのを考慮する必要があります。就労移行支援事業所の利用者数には定員があり、多くの場合、利用者数は10〜20名程度です。実習の案内や求人情報の案内を多くの人に届けるためには、支援連携のやり取りを多数の事業所に対して同時並行で行う必要があります。また、良好な関係性を築くためには相応の期間が必要です。そのため、計画的・継続的に障害者雇用を行う多くの企業が、障害者雇用の専任スタッフを配置しています。
近年は障害者雇用に特化した採用代行などの民間サービスを行う事業者も増えています。人員に余裕がない企業様や、規模が小さく、専任スタッフを置くほどのボリュームがない企業は、そのような民間サービスを利用することを検討してもよいかもしれません。
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