障害者雇用の面接について、悩む方は多いのではないでしょうか。ミスマッチ回避のためには、就業可能かも含めて人物を理解する必要があります。しかし、障害者雇用の面接では、一般枠の面接よりも配慮ある振る舞いが求められます。
本記事では、障害者雇用の面接における心構えや、大まかな流れなどを解説します。障害者に配慮した質問例も紹介するので、面接に役立ててください。
このページの目次
障害者雇用の面接における心構え
候補者にとって、面接官は「会社の顔」ともいえる立ち位置です。障害について理解ある会社だと感じてもらえるように、障害者雇用に関する基本的な知識を理解しておくように努めましょう。障害者雇用の面接に対してどのような心構えで望むのが良いのか、重要なポイントを解説します。
障害者雇用の面接での「心構え」
■活躍することを期待する
前提として、一般枠の雇用と障害者雇用の面接には大きな違いはありません。「候補者がこの会社で安定して活躍することができるのか?」を意欲と能力、人柄や置かれている環境から総合的に判断することが重要です。
■障害名ではなく、人として理解する
障害者採用ではつい「障害」に着目しすぎてしまい、診断名で採用の可否を判断しがちです。、しかし診断名は一つの情報に過ぎず、同じ診断名でも人により状況は大きく異なります。色眼鏡にとらわれず、一人の人として向き合い、人物の理解に努めましょう。
■ミスマッチを防ぐために遠慮せず質問する
障害者雇用の面接では、障害の状況を知るためにネガティブな質問をする場合もあります。
障害者雇用の面接に不慣れな人は、つい遠慮してしまい障害に関する詳しい話や過去のエピソードを聞くことに躊躇してしまうことがあります。
その結果自社との相性を判断するために十分な情報を得ることができず、ミスマッチにつながってしまったり、採るべき人材を取りこぼしてしまう可能性があります。
「雇用後のミスマッチを防ぐために質問するので、差し支えない範囲で答えてください」と前置きをしながら、必要なことは遠慮なく聞くことが重要です。
障害者雇用の面接での「スタンス」
障害者雇用の面接では、弱点探しではなく、候補者の良い部分を見つける姿勢が重要です。不安材料を払しょくするために、障害の状況や過去の失敗、将来のリスクなどを根掘り葉掘り聞きがちな面接官も少なからず見られます。しかし、ネガティブな質問ばかりでは候補者と信頼関係を構築できません。
また、「過集中の傾向が見られる方」を「周囲の環境によらず集中して作業できる方」というように、候補者の特性をポジティブに捉える姿勢も大切です。「入社したら、どのように活躍してくれるだろう?」という期待をもって候補者と向き合いましょう。
障害者雇用の面接での「判断基準」
障害者雇用の面接では、候補者の「自己認識」に引っ張られず「事実」により判断することが重要です。実際の数字や具体的なエピソード、周囲からはどう評価されていたか?などを聞いて、多角的な視点から判断しましょう。
掘り下げるポイントのの具体例としては、「前職を退職した理由を聞かせてください」「発達障害の診断を受けたきっかけを教えてください」「なぜ大学を留年しましたか?」などがあります。
気になった部分があれば「答えにくければ無理に答えなくても大丈夫です」とまくら言葉を添えたうえで、淡々と遠慮せずに質問してください。
障害者雇用の面接の流れ
障害者雇用の面接時間はご本人への負担も考慮し、30〜45分程度で終わらせることができるとよいでしょう。個人の主観のみで判断しないよう面接官は複数で行うことが望ましいですが、あまり多すぎても相手のプレッシャーになります。目安としては、2〜3名が望ましいでしょう。
Kaienがおすすめする「面接の流れ」は以下のとおりです。
1.候補者が安心して話ができる雰囲気を作る
候補者が安心して話せるように、心理的安全性に重点を置いてください。「気になったことがあれば、面接の途中でも質問していただいて構いません」「答えたくない質問は無理して答えていただく必要はありません」と前置きしてから面接を始めましょう。
2.面接における「配慮の要望」の有無を確認する
応募者によっては、面接でのコミュニケーション方法に配慮を必要とする場合があります。
聴覚障害や視覚障害のある方の場合にはイメージがしやすいかと思います。加えて、精神障害や発達障害の方の場合にも、なるべくゆっくり質問することを希望していたり、言葉をまとめるのに少し時間がかかるので回答に猶予があったほうが良い方もいます。
採用選考時の合理的配慮は、本人から申し出ることが原則ですが、面接官側が「必要な配慮はありますか?」と先に投げかけることで、より障害に理解ある姿勢を伝えることができるでしょう。
3.面接官からの質問
前述した「心構え」や、「スタンス」を参考にしながら、必要な事項を確認しましょう。
4.候補者からの質問を受ける
応募者側からの視点でも、自分に合った職場かどうかを判断していただくことがミスマッチを防ぐうえで重要です。「気になっていることがあれば遠慮なく何でも質問してください」と促し、ご本人が不安に思っていることが解消されるよう、たっぷりと時間を取って、質問に回答するよう心がけてください。
5.面接後の「選考の流れ」を改めて確認する
面接の最後に、面接の結果を伝えるタイミングや連絡手段。次の選考に進む場合にはいつ頃どのような選考プロセスとなるのかをお伝えすると、応募者の安心につながるでしょう。
一般枠の面接との違い
一般枠の面接との違いとして、特に意識しておきたいポイントは以下の3点です。
■より候補者の心理的安全性に配慮し、信頼関係を構築するよう努める
障害者雇用の面接では、候補者に対して一定のネガティブな自己開示を求めます。素直に話してもらうには、一般枠よりも心理的安全性と信頼関係の構築がより重視されます。
■志望動機は「なぜこの会社を応募したか」ではなく「なぜこの業務に応募したか」を重視する
志望動機の評価基準を、一般枠と同様に考えることは推奨しません。一般枠の面接では、なぜこの会社に応募したか、という「会社に対する志望動機」が重視されます。しかし、障害者雇用の求職活動においては、会社単位で応募先を検討することは稀です。そのような質問をしても、おそらく面接対策としての表面的な回答しか返ってこず、マッチングを判断するための本質的な情報にはならないでしょう。
障害者雇用の求職者は、どのような業務で自分の能力が発揮されるか?どのような環境であれば仕事が長続きするか?という視点で応募先を選定しています。面接官もそのような視点で「なぜ応募したのか?」を理解することが重要でしょう。
■支援者の同席は、前向きに検討する
一般枠の面接においては、第三者が面接に同席することはあまり考えられないでしょう。しかし障害者雇用の面接においては、支援者の同席はポジティブに受け止めるべきです。
支援者の同席は「本人が一人で面接することに不安があるため」ではありません。面接官にとっては、第3者の視点から客観的な評価やエピソードを聞ける大きなメリットがあります。
障害者雇用の面接で確認するべき5つのポイント
障害者雇用の面接では、就業可能な状態にあるかを入念に見る必要があります。ここでは、障害者雇用の面接で確認するべき5つのポイントを解説します。
健康と日常生活の安定
一般枠の面接とは異なり、障害者雇用の面接では就業可能な状態かを見極める必要があります。まず候補者の心身が健康で、安定した日常生活を送れているかを確認しましょう。
物事のとらえ方(認知のクセ)
過去の経験を語ってもらうと性格や考え方の傾向が見えてきます。他責思考ではないか、過剰に自分を責める傾向がないかなど、面接での対話を通して候補者の物事のとらえ方を推測しましょう。
自己理解と障害受容
障害を受け入れ必要なサポートを受ける気持ちがある方は、スムーズに就業できる可能性があります。自己理解と障害受容ができているかを面接の中で確認しましょう。
レジリエンス
採用活動におけるレジリエンスは、失敗やストレスを乗り越える力を指します。レジリエンスの高い候補者は、仕事で失敗したりストレスを感じたりしても、克服して成長できる可能性があります。そのため、面接での対話を通して候補者のレジリエンスの高さを確認しましょう。
就労に対する意欲
前述のように一般枠の面接とは異なり、障害者雇用の面接では、自社への志望動機はそれほど重視しなくて構いません。業種や職種に対する興味を尋ねて、候補者の就労に対する意欲を確かめてください。
また、採用後のミスマッチ回避のため、候補者が業務内容をどのくらい理解しているか、それらを仕事として行えるスキルや能力があるのかも、聞いておきましょう。
上記5つの視点で、評価することができるよう、事前に質問項目を準備しておくことをおすすめします。
以下のリンク先では、上記5つの観点で具体的な質問の事例を記載した「面接評定シート」を無料ダウンロードいただけます。本記事と合わせてご活用ください。
はじめての面接官も安心! 「面接評定シート」(精神・発達障害編)
ミスマッチ回避のために確認しておきたいこと
採用後のミスマッチを回避するために、以下の内容を確認しておきましょう。
- 服薬の状況
- 通院の頻度
- 障害の診断を受けた経緯
- 主たる障害以外の持病の有無
- 家族のサポートの有無(聞き方に注意)
就労準備が出来ているかを見極めるため、という目的が候補者に伝わっていれば、踏み込んだ質問でも受け入れてもらえる可能性があります。特に、家族のサポートの有無はプライベートにかかわる内容のため、聞き方に配慮が求められます。繰り返しになりますが、信頼関係の構築を重視して面接を進めましょう。
一般的に面接で聞いてはいけない質問
公正な採用活動の推進に向け、厚生労働省は「障害者枠・一般枠を問わず、適性と能力に関係がない事項を問うことは就職差別につながるおそれがある」と表明しています。本人に責任のない事項、思想信条など本来自由であるべき事項については、質問を避けてください。
本人に責任のない事項の例は以下のとおりです。
- 本籍地、出生地
- 家族に関すること
- 部屋数や間取りなど住宅状況に関すること
- 生活環境・家庭環境
本来自由であるべき事項の例は以下のとおりです。
- 宗教、支持政党に関すること
- 人生観、生活信条、思想に関すること
- 労働組合に関する情報
- 購読新聞・雑誌・愛読書、尊敬する人物
障害者雇用の面接で注意すべき言葉遣い
障害者雇用の面接では、障害者を区別するような言葉遣いを避けましょう。例えば「障害者スタッフ」ではなく、「障害のあるスタッフ」というような表現が望まれます。また、「普通は」「一般的には」という表現も、候補者としては線引きをしているように感じられます。
「障害はいつから発症しましたか?」という問いかけも避けてください。障害には先天的なものと後天的なものがあり、「発症」という言葉が適さない場合もあります。障害に対する理解が浅いと候補者に思われないように、「違和感を持ったのはいつ頃ですか?」と質問しましょう。
面接の際に注意すべき言葉遣いについて詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
まとめ
障害者雇用の面接では、候補者と信頼関係を構築することがポイントです。「障害」ではなく「人」を理解するように心がけましょう。弱点ではなく長所を見つけるように意識すると、候補者をより理解できます。
また、候補者の応答には主観によるものが混じっている場合があります。数字や周囲の人の意見などを含んだ具体的なエピソードを聞き、事実をベースに判断してください。
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