障害者雇用率3%超の現場ノウハウを集約 ユーコープの事例集作成プロジェクト

生活協同組合ユーコープ

今回は、神奈川・山梨・静岡の3県を中心に事業展開する「生活協同組合ユーコープ」様(以下ユーコープ)の障害者雇用における取り組みについて、インタビューを行いました。長年にわたり地域社会に根ざした活動を続けるユーコープ様が、いま改めて障害者雇用における更なる発展を目指す背景や想い、その中で感じることなどを伺いました。

この記事は、Kaienの法人向けサービスを検討している障害者雇用担当者の方に向けて、ユーコープ様の事例を通して、障害者雇用の課題解決と質向上に向けた取り組みをご紹介するものです。

生活協同組合ユーコープ 工藤様、福田様

店舗やセンターの現場で活躍するユーコープの障害者雇用、法定雇用率は3%を超える

■まず、生活協同組合ユーコープについて教えてください。

工藤様: ユーコープは、本部を横浜市中区に置く、神奈川県、静岡県、山梨県を事業エリアとする生活協同組合です。2013年に3つの地域生協が組織合同して誕生しました。生協の宅配サービス「おうちCO-OP」や店舗事業、夕食宅配「マイシィ」、福祉・保険・リフォームなど多彩なサービスを提供し、地域のくらしを支えています。
基本理念「『人-社会-自然』の調和ある平和な社会の実現に貢献する」のもと、組合員のニーズに応えてくらしに役立つ商品やサービスを提供することをメインとしながら、組合員の声や参加、人と人のつながりを大切にして、毎日のくらしと地域や地球環境、平和な社会への願いをつなげています。 2025年4月現在、29の宅配センターと77の店舗を展開、組合員数は、約182万人です。

■ユーコープ様の障害者雇用の現状について教えてください

工藤様: ユーコープは、ダイバーシティ促進に関する方針を掲げ、「多様性を認め合い、誰もがいきいきと働ける職場づくり」に取り組んでいます。性別、国籍、障害の有無、性自認、性的指向などに関わらず、一人ひとりが互いに認め合い、支え合い、安心して活躍できることを目指しています。

その中でも障害者雇用は、2018年の障害者雇用支援担当の配置をきっかけに、より積極的な採用活動を進めてきました。
採用プロセスを整備し、本人の適性を見極めるために職場見学や実習を取り入れました。
雇用後も、本人・所属長・支援機関が連携し、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の「振り返り会」を行うなど、職場定着支援にも力を入れています。
このように、障害の有無に関わらず、誰もが安心して働き続けられる環境づくりを進めています。

障害者雇用率は、当時の1.8%から、現在は3.3%と企業の法定雇用義務を上回っています
様々な障害のある職員が、宅配センター・店舗・リサイクルセンターで欠かせない人財として活躍しています。

事例集を見る工藤様、福田様

障害者雇用拡大に伴う新たな課題と、解決に向けた「現場で活かせる 障害者雇用対応ガイドブック・事例集」の取り組み

■障害者雇用を積極的に行われる中で、どのような課題がありましたか?

工藤様: 採用は順調で、店舗や宅配センターで障害のある職員の活躍の場を作り出せた一方、配置が広がるにつれて、現場から様々な声が上がるようになりました。

「当事者職員と、どう接していいのか、分からない」
「本人の体調の変化により、勤怠が安定しない」
「そもそも障害のある方を受け入れるのが難しい、と感じてしまう」

また、現職の障害者雇用支援担当が5年目となり、経験・知識・熱意による属人化にも課題を感じていました。担当者や自部門だけではなく、外部の客観的な視点を取り入れることが必要だと考えていました。

ちょうどそのような時期に、Kaienより「ユーコープの障害者雇用を“見える化”する事例集を作成してはどうか」とご提案いただきました。
受け入れ職場での好事例/上手くいかなかった事例を収集し、要因を掘り下げ、成功パターンを言語化した上で、店舗や宅配センターへ展開していく――そのアプローチに、課題解決の糸口を感じ、Kaienのコンサルティングを活用して事例集・ガイドブックの作成に取り組むこととなりました。

近年の採用活動では、精神障害や発達障害のある方からの応募が多数を占めています。そうした背景の中で、精神・発達障害に関する知見が豊富なKaienは、本取り組みにおけるパートナーとして非常に心強く、提案を受けた決め手にもなりました。

工藤様

■具体的な事例収集・ガイドブック作成の取り組み内容を教えてください。

福田様: 「現場で活かせる 障害者雇用対応ガイドブック・事例集」は、現在、障害のある職員を受け入れている職場の対応の知恵や困難やそれを乗り越えた事例を深堀り・教訓化するとともに、新たに障害のある職員を受け入れる所属長・職場・部門での学習資料としての活用を目指したものです。

作成のステップとしては、❶関係者へのアンケート、❷ヒアリングで事例を収集・深堀、❸事例集・ガイドブック化となりました。

❶のアンケートは、障害のある職員49人、所属長37人、同僚・直属上司41人と、24の就労支援機関について実施しました。特にそれぞれの立場の生の声を拾い上げられるような項目を設定しました。

その後、❷ピックアップした12事業所(店舗・宅配センター・リサイクルセンター)を訪問し、障害のある職員・所属長・同僚・直属上司・支援機関へのヒアリングを実施しました。12事業所は、特に障害者雇用支援担当が組織内で共有したい事例であると抽出したものになります。好事例もあれば、対応に苦慮した・上手くいかなかった事例もあります。

❸では「具体的事例を通じた現場・同僚目線のトラブルシューティング」「ユーコープの障害者雇用の取り組みの解説」「障害者雇用の基礎知識」「障害者雇用の職場確認チェックリスト」の構成で資料化をしました。網羅的に障害者雇用や組織の取り組みが分かるような内容になっています。

福田様

■アンケートやヒアリングではどんな話がありましたか?

福田様: 現場の生の声として、本当に様々な話が聞けました。
入社時は勤怠が不安定だった方が、まずは自分のできることをコツコツと取り組み、周囲も小まめにフィードバックをすることにより、徐々に勤怠が安定していったケース。
入社1年後に業務態度に課題が出てきた職員に対し、同僚パート職員が主体的に振り返り会に参加し、関わり方のヒントを得ることで、強みに目を向けることができ、お互いの関係性や障害のある職員の行動に変化を起こしたケースもありました。

個人的に嬉しかったのは、以前の振り返り会で「お金の為に働く」と言っていた障害のある職員が、今回のアンケートでは働く理由を「生きがい」と回答していたことです。

また、支援機関にも話を聞き、フラットな目線で真正面から相手と向き合って理解しようとする同僚の姿勢を評価された職場もありました。また、当事者職員を中心に支援機関や家族とも信頼関係を築くマネジャーの姿勢を評価頂いた事例もありました。裏返すと「余裕がない、お互いに関心とサポートがない職場」は、障害者雇用にかかわらず人財の定着がしないと気づかされました。

改めて、「障害者の働きやすい環境を整えていくこと」は、障害の有無に関わらず「誰もがいきいきと自分らしく働ける職場づくり」にも繋がるのだと改めて感じました。

「現場で活かせる 障害者雇用対応ガイドブック・事例集」のイメージ
「現場で活かせる 障害者雇用対応ガイドブック・事例集」のイメージ

完成した対応ガイドブック・事例集、1事例ずつ時系列や解説が掲載されている
その他、障害者雇用の基礎知識やチェックリストも

Kaienの専門性と客観性が一気通貫で取り組みをサポート

■Kaienは今回の取り組みでどのような役割を担っていたのでしょうか?

福田様: アンケート項目・現場ヒアリング項目の作成から企画から実行まで一気通貫してサポートを受けました。現場ヒアリングでは、静岡・神奈川の12事業所に一緒に出向きました。

特に印象的だったのは、ヒアリングです。
Kaienには客観的な立場から障害のある当事者職員や関係する職員・支援機関に話を聞いてもらったのですが、起こった事象に対してのアセスメント(なぜその事象が起こったのかの背景を探る)において、ポイントを的確にまとめる力に障害者支援の専門性を感じました
私たちユーコープの強みとは何か、ボトルネックや弱みは何か、あぶりだしてもらったようでした(笑)。

また、今回の取り組みを執行役員会において発表の機会を設け、Kaienにも登壇いただきました。障害者雇用の基礎知識を含むプレゼンテーションをお願いしたところ、参加者からは「障害者雇用の意義や、本取り組みの必要性をあらためて実感できた」との声が寄せられました。

執行役員会の翌日、出席していた理事長がリアルタイム更新のWeb部内報の『トップのツブヤキ』コーナーで下記の投稿をしており、担当者としては非常に嬉しく感じました。

障がい者雇用も「働きやすさ」と「働きがい」
障がい者雇用に関する学習会をおこないました。
講師の先生に具体的なユーコープの現場の例も交えてお話を伺いました。キーマンになる人に負担がかかりすぎることがあるので、上司の支援と仲間の支援がとても大切になります。
障がい者の方もやはり「働きやすさ」と「働きがい」だれもが働き続けられる職場のキーワードは同じですね。
組織を挙げて障がい者の方たちが元気に働ける職場づくりをしていきましょう。

現場発の取り組みを経営層にも共有できたことは、大きな意味があり、有意義な機会となりました。

ハンドブックの作成にあたり、ユーコープの職場の事実に基づいたオリジナルの事例まとめや職場チェックリスト作成に大きな力を発揮していただき、サポート頂いたことに感謝します。

■今後のユーコープ様の障害者雇用について教えてください。

工藤様: ガイドブックは、すべての宅配センターと店舗の事業所に配布をし、全ての管理者がイントラサイトを通じて参照・閲覧できるようにします。今後3年間通じて、全ての事業所で学習会を行い、掲載されている内容を浸透・共有化させていきたいと思います。
障害者雇用を進める上で、知識や技能だけでなく、お互いを認め合うことが重要だと感じています。

ユーコープのなりたい姿は、「様々な障害特性のある職員を受け入れる職場・部門を広げ」「採用から始まり、定着・育成を引き出す職場を増やしていき」「様々な困難をともに乗り越えて、障害のある職員の成長と働く幸せを共有できる職場をつくる」です。
障害のある職員の採用を更に進め、活躍の場を拡大していきたいと考えています。本取り組みがその一助になるのではと期待をしています。

生活協同組合ユーコープ
人財開発部 人財開発課
課長 工藤 玲子 様
同 障がい者雇用支援担当 福田 裕行 様

インタビュー協力:
生活協同組合ユーコープ 人財開発部 人財開発課 課長 工藤玲子 様
同 障がい者雇用支援担当 福田裕行 様

Kaienが行ったサポート内容

総合コンサルティング(アンケート、ヒアリング、資料化)

日時場所イベント申込
5/28(水)
13:30-15:00
大阪・天六【就労移行支援の見学あり】新任の障害者雇用ご担当者向けセミナー
<業務切り出し・採用・定着の基礎知識から、最新の民間サービスのトレンドまで>
リンク
6/3(火)
14:00-14:40
オンライン採用計画のコツ!:成功する障害者雇用の計画と業務設計リンク
6/6(金)
15:00-16:00
オンライン初めての障害者雇用ガイド①:基礎から学ぶ制度とマーケットリンク
6/10(火)
14:00-14:40
オンライン採用計画のコツ!:求職者に響く求人票の作り方リンク
6/13(金)
14:00-15:00
オンライン長く働ける環境をつくる!入社準備から定着・キャリア支援までの実践ノウハウリンク
6/17(火)
15:00-16:00
オンライン初めての障害者雇用ガイド②:合理的配慮って何?職場の理解を深めるポイントリンク
6/18(水)
14:00-14:40
オンライン採用計画のコツ!:書類・面接・実習でチェック!採用の見極めポイントリンク
6/26(木)
13:30-15:00
東京・秋葉原【就労移行支援の見学あり】新任の障害者雇用ご担当者向けセミナー
<業務切り出し・採用・定着の基礎知識から、最新の民間サービスのトレンドまで>
リンク
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