
障害者雇用の最低賃金は、基本的にすべての労働者に同じように適用されます。減額が認められるケースもありますが、条件と手続きが必要です。
また、障害の種類や働き方によって賃金の水準は異なるため、企業は評価や昇給の仕組みをどのように整えるかが重要なポイントになります。
この記事では、障害者雇用の最低賃金に関するルールや障害者雇用の平均賃金について解説します。
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障害者雇用に最低賃金は適用される?

障害者雇用においても、賃金は原則として最低賃金法に基づく基準を考慮する必要があります。障害を理由に賃金を下げることは法律で禁じられており、同じ業務内容や責任範囲で働く場合には、障害の有無に関係なく同一の賃金水準が適用されるのが原則です。
ただし、すべてのケースが同じ基準で扱われるわけではありません。精神・身体・知的障害などの影響により、通常の最低賃金で働くことが難しいと判断される場合には、例外的に最低賃金の減額が認められる制度があります。
とはいえ、最低賃金の減額は事業主が独自に賃金を下げられる仕組みではありません。利用する際は、都道府県労働局長への申請と、正式な許可が必要となります。
障害者雇用の最低賃金に関するルール

障害のある方を雇用する場合でも、最低賃金の考え方は原則として他の労働者と同じです。最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があり、どちらも法律で定められた必ず守るべき賃金の下限です。
まずは、この2種類の違いと適用範囲を整理しておきましょう。
| 種類 | 内容 | 適用者 | 除外の可能性がある人 |
| 地域別最低賃金 | 都道府県ごとに定められた最低額 | 原則すべての労働者(障害のある方も含む) | なし(基本的に全員が対象) |
| 特定最低賃金 | 製造業など特定の産業ごとに設定される最低額 | 該当産業で働く労働者 | ・18歳未満・65歳以上・試用期間中の者・軽易業務従事者など |
地域別最低賃金と特定最低賃金がある
最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があります。地域別最低賃金は都道府県ごとに設定されており、正社員・パート・アルバイトなどすべての労働者が対象です。
一方で、特定最低賃金は製造業など一部の産業に限定して定められ、その産業の中心的な業務に従事する労働者に適用されます。どちらの最低賃金も、障害の有無に関係なく適用される点は共通しています。
また、同じ労働者に地域別と特定の両方が該当する場合は、より高い金額の最低賃金を適用しなければならないというルールも定められています。
最低賃金から減額される場合がある
最低賃金は原則すべての労働者に適用されますが、精神・身体などの障害により著しく労働能力が低いと判断される場合には、減額特例が認められることがあります。減額特例制度を利用するには、雇用主が都道府県労働局長へ申請し、障害の影響で業務遂行に大きな支障が生じていることを客観的に示す資料を提出する必要があります。
許可が下りた場合は、労働者の能力に応じて最低賃金を一定額まで減額し、金額を基準に労働契約を結べます。ただし、許可を受けた特定の業務に限り減額が認められる点には注意が必要です。申請時に指定した業務以外を担当する場合は、他の労働者と同じ最低賃金が適用され、減額は一切認められません。
最低賃金減額の特例許可制度の条件
最低賃金の減額特例が認められるのは、あくまで一定の条件を満たす場合に限られます。
対象となるケースは法律で明確に定められており、主な例は以下のとおりです。
- 精神または身体の障害により、著しく労働能力が低いと判断される者
- 試用期間中の労働者(一定期間に満たない者)
- 厚生労働省令に基づく職業訓練を受けている者
- 軽易な作業に従事している者
- 断続的な作業に従事している者
ただし、これらの条件に当てはまれば自動的に減額が許可されるわけではありません。とくに障害がある場合は、障害そのものではなく、障害が業務遂行にどの程度影響を与えているかが判断基準となります。
障害を理由に減額する場合は、「最低賃金での雇用が著しく困難と認められるほど、労働能率が一定水準に満たない」ことを、資料や評価結果などの客観的な証拠とともに示す必要があります。また、減額の幅には上限があり、職務内容・経験・作業の成果などを総合的に評価したうえで最終的な金額が決まります。
不当な給料減額は違法である
最低賃金法では、最低賃金を下回る賃金で労働者を雇うことを明確に禁止しており、雇用形態に関係なく違反は違法行為に該当します。そのため、障害があることを理由に無断で最低賃金以下の賃金を設定したり、一方的に給与を引き下げたりすることは認められていません。
最低賃金を下回る契約は法律上無効となり、企業には50万円以下の罰金などの罰則が科される可能性があります。さらに、違反が発覚すると未払い分の賃金を遡って支払う必要が生じるほか、労働基準監督署の指導が入るなど、企業としての信用を大きく損なうリスクがあります。
障害者雇用の平均賃金は?

厚生労働省の調査によると、障害の種類別で平均賃金に違いが見られます。
- 身体障害者の月収:23万5,000円
- 知的障害者の月収:13万7,000円
- 精神障害者の月収:14万9,000円
- 発達障害者の月収:13万円
出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書 」
ここでは、主要な障害種別の平均的な月収を詳しく解説します。
身体障害者の月収は「23万5,000円」
身体障害者の平均賃金は、厚生労働省の調査によると23万5,000円(所定内給与は22万3千円)です。さらに、フルタイム(週30時間以上)で働く場合の平均賃金は26万8,000円となっており、全体的にやや高めの水準となっています。
賃金が比較的高い背景には、勤続年数が平均12年と長いことや、月給制で安定した働き方が多いことが挙げられます。長く働くことで経験やスキルが蓄積され、結果として賃金水準も上がりやすくなるという傾向が見られます。
知的障害者の月収は「13万7,000円」
知的障害者の平均賃金は、厚生労働省の調査によると13万7,000円(所定内給与は13万3,000円)です。フルタイム(週30時間以上)で働く場合は、平均賃金が15万7,000円まで上がります。一方で、週20〜30時間未満では11万1,000円、さらに短時間勤務では7万〜8万円台と下がる傾向です。
こうした賃金水準の差は、時給制で働く人が多いことや、勤務時間が短い働き方が一般的であることが影響しています。そのため、全体の平均賃金は比較的低い水準となっています。
精神障害者の月収は「14万9,000円」
精神障害者の平均賃金は、厚生労働省の調査によると14万9,000円(所定内給与は14万6,000円)です。週30時間以上働く場合の平均は19万3,000円と上昇し、勤務時間が長いほど賃金水準が高くなる傾向が見られます。
一方で、週20〜30時間未満では12万1,000円、週10〜20時間未満では7万1,000円にとどまり、勤務時間による賃金差が大きい点が特徴です。精神障害者の場合、症状の波や通院による勤務時間の変動が生じやすいこともあり、平均勤続年数は約5年と短めです。こうした要因が賃金水準や働き方にも反映されていると考えられます。
発達障害者の月収は「13万円」
発達障害者の平均賃金は、厚生労働省の調査で13万0,000円(所定内給与は12万8,000円)とされています。週30時間以上のフルタイムで働く場合の平均は15万5,000円、週20〜30時間未満では10万7,000円となっており、勤務時間の長さによって賃金に差が生じています。
発達障害者の場合、短時間勤務の割合が高く、経理・総務などの事務職や軽作業といった職種に就くケースが多いことで、全体の平均賃金は知的障害者と同程度の水準にとどまっています。
ただし、数値はあくまでも平均値であり、実際の賃金は担当業務の内容、求められるスキル、勤務時間、地域の賃金水準などによって異なります。雇用する際は、個々の状況に応じて適切に賃金を設定することが重要です。
障害者雇用に関するよくある質問

ここでは、障害者雇用に関するよくある質問を紹介します。
- 障害者の昇給は、一般社員と同じ基準で行うべきか?
- 障害者雇用として採用した社員が、後に一般枠へ移行する場合、賃金体系はどうなるのか?
- 障害特性による業務内容の違いは、賃金設定にどこまで反映してよいのか?
障害者の昇給は、一般社員と同じ基準で行うべきか?
障害者を理由に昇給や給与水準を低く設定することは、障害者差別解消法で明確に禁止されています。業務内容や成果が同じであれば、雇用形態や障害の有無にかかわらず、同一の賃金・同一の昇給基準を適用するのが原則です。
そのため、一般社員と同じ職務を担当し、同等の成果を上げている場合には、昇給の扱いも一般社員と同様に行う必要があります。一方で、障害の特性から担当業務や役割が異なる場合には、実際の業務内容・成果・能力に応じた合理的な評価が求められます。
障害者雇用として採用した社員が、後に一般枠へ移行する場合、賃金体系はどうなるのか?
障害者雇用枠で採用した社員が一般枠へ移行する場合でも、業務内容・責任範囲・成果が同等であれば、賃金に差をつけることは認められません。そのため、一般雇用枠の社員と同じ職務を担うのであれば、一般枠の昇給基準や給与に合わせることが原則となります。
ただし、一般枠へ切り替わった直後は、業務範囲の拡大や新しい環境への適応が必要になることもあり、企業によっては段階的に賃金を調整する運用を行うケースもあります。これは、急激な負担増を避け、本人が安定して能力を発揮できるよう配慮するためです。
いずれの場合も、最終的には一般社員と同等の処遇を目指すことが求められます。移行後の賃金設定にあたっては、本人の職務内容や成果を適切に評価し、公平性を確保することが重要です。
障害特性による業務内容の違いは、賃金設定にどこまで反映してよいのか?
障害の特性に合わせて業務内容を調整すること(合理的配慮)は法的に認められており、担当する職務が変わり、賃金が異なること自体は違法な差別にはあたりません。
たとえば、負担の大きい業務を外し、特定の作業に専念してもらうといった配慮を行った場合、職務範囲が一般社員と異なるため、賃金が変わることは自然なことです。ただし重要なのは、賃金の基準が「障害があるかどうか」ではなく、「実際の職務内容・業務量・成果」に基づいているかという点です。
配慮の結果として職務が変わったのであれば、職務に見合った評価軸を設定し、スキルや業務の質・量を総合的に判断して賃金へ反映させる必要があります。
障害者雇用の賃金を正しく理解し、安心して働ける環境をつくろう

障害者雇用の賃金設定には、最低賃金の適用ルールや減額特例の可否、障害特性に応じた業務設計など、慎重な判断が求められる場面が多くあります。自社だけで判断しにくい場合や、制度の運用方法に迷う場合は、専門家に相談することでリスクを避けながら、より適切な雇用環境を整えられます。
Kaienでは、障害者雇用に関する相談や採用・定着支援のサポートを行っており、実務に即したアドバイスを受けられます。自社の状況に合わせた最適な運用を検討したい企業の方は、以下の無料相談フォームで気軽にお問い合わせください。
【ディスクリプション】
障害者雇用では最低賃金は原則適用され、減額特例も厳格な条件下でのみ認められます。この記事では、制度の基本や減額の可否、障害種別の平均賃金まで賃金設定で迷わないためのポイントを解説します。
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