【2023年最新】障害者雇用促進法とは?改正点をわかりやすく解説

障害者雇用促進法では、障害者雇用に関する企業の義務などが定められています。違反した場合には罰則規定もあり、法律の内容を正確に把握していないと罰金や納付金を納めることになってしまうかもしれません。

そこでこの記事では、障害者雇用促進法の対象や法改正の内容、罰則規定や企業担当者が意識するポイントなどをわかりやすく解説します。

障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法は、事業主に対して一定の割合で障害者の雇用を義務付ける法律です。障害者の職業生活における自立を促すための職業リハビリテーション推進や、差別の禁止、合理的配慮の提供義務などを定めています。

障害者雇用促進法のもととなったのは、1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」です。
当初は、雇用の対象を身体障害者に限定するものでしたが、何度も法改正を重ねて対象者の範囲を拡大し、現行法となりました。

現在では、主に障害者雇用率の向上を課題として、定期的な法改正が行われています。

障害者雇用促進法の目的・理念・意義

厚生労働省では、この法律の目的を「障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、職業リハビリテーションの措置等を通じて、障害者の職業の安定を図ること」と説明しています。
就労が困難な障害者に平等な雇用の機会を提供し、安定した職業生活を目指すものです。

この背景には、障害の有無に関わらず全ての国民が能力適性に応じて就業し、個人として尊重される「共生社会」の実現という理念があります。
障害による支障を取り除き、個人の能力を発揮して自立した生活を送れるようにすることがこの法律の意義です。

障害者雇用促進法の基礎知識

障害者雇用促進法の制度概要について詳しく解説します。

対象となる企業

障害者雇用促進法では、民間企業はもちろん、公共団体や地方の教育委員会など全ての事業主に対して障害者の雇用を義務付けています。

ただし、同法では全従業員のうちどのくらいの割合で障害者を雇わなければならないのかを示す「法定雇用率」という基準が規定されています。
2023年現在、民間企業の法定雇用率は2.3%であることから、従業員を43.5人以上雇用している場合に障害者雇用の義務が発生することになります。

また、過去には障害者雇用が馴染まなない特定の職種や業種について障害者雇用率を軽減する「除外率制度」が存在しましたが、ノーマライゼーションの観点から2002年に廃止されました。除外率制度については、後述で詳しく解説します。

障害者雇用義務化の対象となる障害者

厚生労働省では、障害者雇用の対象となる障害者を次の3つの障害者手帳を所有している人としています。

身体障害者手帳肢体不自由や視覚・聴覚障害、内臓機能の障害など、身体機能に一定の不自由があると認められた人に交付される
療育手帳児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される
精神障害者保健福祉手帳うつ病や統合失調症などの精神疾患があり、一定程度の精神障害の状態にあると認定された人に交付される
障害者雇用義務化の対象となる障害者一覧

ただし、障害者雇用に関する助成金については、手帳を持たない統合失調症やそううつ病、てんかんを持つ従業員も対象となります。

企業の雇用に関わる3つのポイント

障害者雇用促進法の中で、特に企業の採用活動に関わるポイントとしては、次の3つがあげられます。

  1. 法定雇用率に沿った障がい者の雇用義務
  2. 障害者雇用率が達成されなかった場合に納付金が徴収される
  3. 調整金・助成金が支給される

それぞれ、詳しく解説します。

法定雇用率に沿った障がい者の雇用義務

一定人数以上の従業員を雇用している民間企業や地方公共団体が、全従業員のうちどのくらいの割合で障害者を雇わなければならないのか定めた基準を「法定雇用率」といいます。2023年現在の法定雇用率は事業主別に以下の通り定められています。

  • 民間企業:2.3%
  • 国・地方公共団体:2.6%
  • 都道府県等の教育委員会:2.5%

つまり、民間企業の場合には従業員43.5人につき障害者を1人以上雇用しなければならない計算です。

このほかにも、従業員のカウント方法については様々なルールがあり、法改正によって数値も変化します。正しい雇用数を計算したい場合はこちらの「障害者実雇用率計算シート」を利用するのがおすすめです。

障害者雇用率が達成されなかった場合に納付金が徴収される

法定雇用率を達成していない場合、「障害者雇用納付金制度」の規定に従って納付金を支払う必要があります。

障害者雇用納付金制度とは、常用労働者数が100人を超える事業者を対象に、法定雇用率が未達成の場合は納付金を徴収する制度です。
納付金額は、不足している障害者数1人につき月額5万円となります。なお、この制度は障害者雇用の責任を全ての事業者が共同で果たし、負担を調整することを目的としたもので、罰則規定ではありません。

調整金・助成金が支給される

上記の「障害者雇用納付金制度」では、常用労働者数が100人を超える事業者で、法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合に、超過している従業員1人につき月2万7千円の調整金が支給されます。

このほかにも、厚生労働省では障害者雇用を推進するために次のような助成金制度を用意しています。

  • 特定求職者雇用開発支援金:障害者を継続して雇用した際の助成金
  • トライアル雇用助成金:障害者を試行的に雇用いた事業主への助成金
  • 障害者納付金制度に基づく支援金:職場の施設の整備や介助等の費用を一部助成
  • キャリアアップ助成金:有期雇用労働者または無期雇用労働者を正規雇用した事業主への助成金
  • 人材開発助成金:能力開発や訓練事業を行うために設備の設置・整備、更新を行う事業主への助成金

【随時更新】障害者雇用促進法の改正について

障害者雇用促進法は、社会情勢に合わせて度々見直され、法改正が行われています。法改正の内容について随時更新しながら紹介します。

障害者の法定雇用率が3年後「2.7%」へ引き上げに

障害者雇用促進法で規定される法定雇用率は、障害者雇用の現状や推移などを考慮して、少なくとも5年ごとに設定し直されることとなっています。

2023年現在、民間企業の法定雇用率は2.3%ですが、2024年度には2.5%、2026年度には2.7%と段階的に引き上げられる予定です。
これは、企業が雇い入れにかかる計画的な対応を取れるよう配慮した、段階的な措置です。

また、国・地方公共団体の法定雇用率は現在の2.6%から3年後には「3.0%」に、教育委員会は現在の2.5%から「2.9%」へと引き上げられます。段階的な引き上げ措置については、民間企業と同様です。

障害者の除外率制度の見直し

除外率制度とは、障害者雇用が馴染まない特定の職種や業種について、法定雇用率を軽減する制度です。
前述でも触れた通り、2002年に廃止が決定しましたが、特例措置として業種ごとに除外率を設定するとともに、廃止の方向で段階的に除外率が引き下げられることとなっています。
実際、2004年4月と2010年7月にそれぞれ一律10ポイントの引き下げが実施されました。

しかし、2010年以降、10年以上に渡り除外率の引き下げは実施されていません。
障害者雇用分科会は「実態を踏まえた上で今後の目標やタイムテーブルを設定すべき」としながらも、次回の引き下げは雇用率の引上げの施行と重ならないよう、2025年7月にすると述べています。

精神障害者である短時間労働者の算定方法に係る特例措置の延長

「精神障害者である短時間労働者の算定方法に係る特例措置」とは、法定雇用率や障害者雇用納付金の額などの算定において、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者を本来なら「0.5人」としてカウントするところ、一定の条件を満たす場合に「1人」としてカウントできる制度です。

精神障害者の職場定着率は、週20~30時間の短時間勤務の場合が最も高く、かつ知的障害者に比べて就職後に30時間以上勤務の労働に移行する割合が高いというデータがあることから、職場定着を促進する観点で設定されました。

この特例措置は2023年3月で終了する予定でしたが、延長が発表されています。

詳しくはこちらの記事で解説していますので、併せてご覧ください。

障害者雇用促進法に違反した場合の罰則について

障害者雇用促進法に定められた義務に違反した場合、30万円以下の罰金刑が課されるケースがあります。具体的な違反行為としては、次のようなものがあげられます。

  • 常用雇用労働者数が43.5人以上の事業主で、毎年6月1日に現在の障害者雇用に関する状況を記載した「障害者雇用状況報告書」を管轄のハローワークに提出していない
  • 常用雇用労働者数が100人を超える事業主で、毎年提出義務のある「障害者雇用納付金申告書」を提出していない、または申告内容に虚偽がある
  • 法定雇用率が未達成のため、ハローワークから「雇入れに関する計画」の作成命令を出されたが、従わない
  • 障害者を解雇する際、ハローワークに「解雇届」を提出していない
  • 障害者雇用に関する立ち入り調査において、検査を拒否する、報告内容に虚偽がある、質問に答えないなど非協力的な態度をとる

まとめ

人が平等に能力を発揮できる社会を実現するための法律です。法定雇用率を達成していないと納付金や罰則規定があるだけでなく、企業イメージの低下といった経営リスクも考えられます。法定雇用率の達成に向けて準備を進め、法律を遵守した経営を目指しましょう。

とはいえ、障害者雇用にはある程度の知識や経験が必要であり、自社リソースだけでは達成が困難な企業も多いでしょう。その場合には、障害者雇用の総合コンサルティングや常駐支援を行っているKaienにご相談ください。また以下のリンクでは、障害者雇用のハンドブックや事例集を配布しています。無料でダウンロードできる資料ですので、ぜひご活用ください。

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