障害者雇用の採用・定着は順調でしょうか。なかには課題をお感じの企業様がいらっしゃるかもしれません。
・障害者雇用で入社した社員が早期に退職してしまった。
・魅力的な応募者に内定を出したのに辞退されてしまう。
・面接時に聞いていた印象よりも、業務遂行能力が低い。
障害者雇用について、上記のようなことがしばしば発生している企業様、「職場実習(インターン)」は実施されていますか?まだ実施していないようでしたら、職場実習の受入れをご検討いただくことをおすすめします。
職場実習(インターン)は、雇用が伴わない職場体験の場です。実際の職場で業務体験をする機会をつくることで、企業と求職者が相互に理解を進めることができます。
障害者雇用のご経験の少ない企業の場合は、職場実習に「準備がたいへんそうだ」「情報管理などの面で懸念がある」というイメージがあり、新たに取り入れることに前向きになりづらい傾向があるようです。たしかに、職場実習を受け入れるための準備や、実習受入れ時の人員体制など、一定のコストは発生しますが、障害者雇用の採用から定着・活躍までトータルで考えた際にはメリットが大きく上回ると感じる場合が多いようです。
企業が職場実習(インターン)を実施する4つの目的
では職場実習にはどのようなメリットがあるのでしょうか? 障害者雇用を進めていきたいと考えている企業にとっての、具体的なメリットを4点挙げます。
ミスマッチを防ぐことができる(入社後の離職率が改善する)
障害者雇用を成功させるうえで、「自社に合った人材を採用する」という観点は最も重要といえる要素のひとつです。候補者の人柄やソフトスキルが自社の社風に合っているか?また想定している業務を遂行するうえで十分なスキルや経験があるか?ということを、1時間にも満たない面接のみで見極めることは困難です。
実習では一緒に働き、業務をさせてみる機会を持つことで、面接では判別が困難な「相性」や「適性」を見極めることができるので、入社後のミスマッチのリスクを大きく軽減することができます。
業務適性を見極めることができる(入社後の業務アサインに役立つ)
2点目は「業務適性のアセスメント」です。1点目とも重なりますが、入社後により戦力となって活躍してもらうためには、適性に合った業務内容をアサインすることがとても重要です。実習での業務成果に基づき、正確性に強みがあるのか?あるいは業務スピードが強みなのか?業務上のコミュニケーションはどのようなスタイルが適しているか?ということが入社した時点で把握することで、入社後の早期の活躍が期待できます。
応募者の志望意思を高めることができる(内定辞退を減らすことができる)
職場実習の実施は、内定辞退を減らすことにも寄与します。
法定雇用率の引き上げや人材不足を背景に、障害者雇用の市場は求職者優位の売り手市場です。業務スキルが高く、企業にとって魅力的な求職者は、2社・3社と同時に内定を得ることは決して珍しくありません。そのような状況で、求職者がどの会社の内定を受諾するか?ということを考えるうえで、採用プロセスにおいて実習に行っているかどうか?ということは大きな判断材料の一つです。
当然ですが求職者にとっても雇用後のミスマッチは避けたいものです。職場実習は、事前に職場を見ることができるので不安解消につながります。また、実習の期間を通じて社員との顔が見えるつながりを感じることでより企業への親密度や期待が高まる(いわゆる求職者のロイヤリティ向上)ことが期待できます。
障害に対する正しいイメージを持つきっかけ(職場の受け入れ準備ができる)
特に障害者雇用の経験が少ない企業様では、障害に関して偏った認識を持っていたり、障害のある方を受け入れることに抵抗感を持つケースがあるかもしれません。そのような場合にも、職場実習がよいきっかけとなります。
職場実習はあくまでお互いに理解を深めるための場ですので、雇用を前提としているわけではありませんので、比較的気軽に接点を持つことができます。実際に一緒に働いてみたら、「実際には事前に想定していたイメージと大きく異なっていた。これなら一緒に働けそうだ。」と、はじめは難色を示していた部署が、職場実習の受入れをきっかけに障害者雇用に前向きになるケースも多く見られています。
職場実習(インターン)を成功させるための3つのポイント
最後に、職場実習の受入れをご検討される企業様に向けて、上記に挙げた目的を達成するために必要となる「3つのポイント」をお伝えします。ぜひ参考にしていただき、障害者雇用推進に役立ててください。
何を評価したいのかを明確にして実習プログラムを作成しよう
せっかくお互いに時間をかけて行う職場実習です。実習を通じてどのような能力・適性の見極めを行いたいのか?という点を明確にして、実習プログラム(業務内容)をご用意ください。
一般的に職場実習は1週間から2週間の期間で行われますが、その期間中、単一業務だけを行わせるのは、すこしもったいないかもしれません。数日ごとに、複数の業務内容を任せてみることで、より多面的に適性を確認することができるでしょう。ただ漠然と仕事を渡しているだけでは、業務適性の見極めには繋がりません。例えば「名刺入力の業務では入力内容の正確性を確認したい」というかたちで、どの業務でどんな能力・適性を評価したいのか?ということを想定して、実習プログラムを検討するのがよいでしょう。
個人ワークに加えてグループワークを併せて実施しよう
業務適性を見極めるうえでは、職務の遂行能力も重要ですが、コミュニケーションや人と接する態度、協調性などの観点も、とても大切なファクターとなります。個人で行う作業では、そのようなソフトスキルを見極める場面が限られてしまいますが、数名で力を合わせて一つの成果物を求めるグループワークを、実習プログラムに取り入れることで、より深く、求職者の適性や職場環境への適応を見極めることができます。
実習受け入れの際には ホスピタリティを重視しよう
上に記載した通り、障害者採用は売り手市場です。職場実習を通じて、期待通りに求職者の志望意思が高まればよいのですが、もし横柄な態度や障害に対する偏見を感じさせてしまっては逆効果です。
不安そうにしていたら声をかけてあげる、笑顔で接し相談や質問をしやすい環境を整えるなど、慣れない環境に訪れ居ている方に対するホスピタリティの視点をもって接することが重要です。また職場実習の受入れ担当を特別に設ける場合には、「ホスピタリティがあるか」という観点で人選いただけるとよいかもしれません。
いかがだったでしょうか?
まだ職場実習の実践に取り組んでいない企業様にとっては、すこしハードルが高く感じたかもしれません。しかし先行して行っている企業も、はじめのうちは手探りでスタートし、回数を重ねるごとに徐々に内容をブラッシュアップして、それぞれに合った職場実習のスキームを構築しています。はじめのうちから完璧を求めず、まずは一度やってみよう、というチャレンジの心意気で行ってみてはいかがでしょうか。
もし、職場実習には関心があるけれども、自社のノウハウ・リソースだけでやるのは困難だと感じる場合には、専門機関の助けを借りる手段もあります。併せてご検討ください。
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