2023年10月時点の最新情報あり|特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の支給要件について解説

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、雇用されることが困難と思われる障害者、高齢者、母子家庭の母親などの雇用を促進することを目的とした雇用助成制度です。一定の条件下で雇用した場合に、対象者によって1~3年間、短時間外労働者、短時間労働者の区分で1名あたり40万円から最大で240万円の助成金を受けることができます。

障害者雇用を行っている企業のなかには、雇用後の環境整備やサポート体制構築に充てるため、積極的に助成を受けようとする事業者も多くありますが、助成金の「支給要件」については複数のルールがあり、助成を希望していても受けることができないケースがあります。

本記事では、2023年(令和5年) 10 月1日に厚生労働省から公表された「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) 事業主向けQ&A」に記載された最新の見解も織り交ぜながら、「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の助成を受けるにあたっての支給要件」について、できる限りわかりやすく解説していきます。

制度が複雑でわかりづらいという印象をお持ちの方は、ぜひご参考にしていただければ幸いです。

※本記事にて記載する内容は2023年11月時点の制度について解説したものであり、最新の情報についてはその都度、厚生労働省のサイトなどをご確認ください。また、個別の状況によって判断される場合がありますので、本記事は参考程度にお読みいただき、運用の際には所轄ハローワークにお問い合わせください。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の支給要件の概要

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、高年齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。主な支給要件は以下の3点です。

  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
  • 雇用保険一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること
  • その他の要件

上記の3つのポイントについて、それぞれ詳しく解説をします。

1.ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること

職業紹介事業とは、労働市場において雇用の仲介を行う事業をいい、職業紹介事業者には公的なものと、民間運営のものが存在しますが、一部の例外を除けば、前者(公的なもの)がハローワーク等、後者(民間運営)がいわゆる人材紹介エージェントの企業と認識しておけばおおむね間違いないでしょう。人材紹介事業は職業安定法にて定められる認可事業であり、有料・無料にかかわらず厚生労働省の許可を受ける必要があります。

具体的には次の機関が該当します。

  1. 公共職業安定所(ハローワーク)
  2. 地方運輸局(船員として雇い入れる場合)
  3. 適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者等

特定求職者雇用開発助成金は、ハローワーク経由の採用のみでしか適用されないと誤解されている方が多くいますが、民間の人材紹介エージェントを介した採用であっても、ハローワーク経由同様に助成金を受給できる場合もあります。

ただし、注意しなければならないのは、正式に職業紹介事業者とのしての認可を受けている場合であっても、事業者は当該助成金を取り扱う際には事前申請を届け出ておく必要があることです。雇用決定後のトラブルを避けるためにも民間の人材紹介エージェントを利用する場合には、特定求職者雇用開発助成金の取り扱い申請がなされているかを事前に確認するようにしましょう。

エージェント型の人材紹介ではなく、いわゆる民間の「求人広告」や「ウェブマッチング」のサービスを活用する際にも同様に注意が必要です。このような事業形態は、特定の求職者とのコンタクトを行わないため職業紹介事業には当たらず、職業紹介事業者の認可は必ずしも必要とはされていません。そのため、事業者によっては職業紹介事業者とのしての要件を満たさず、特定求職者雇用開発助成金を申請することができない可能性があります。

また、上記同様に自社が運営する採用ページからの直接応募や、社員からの紹介などのリファラル採用も対象外となります。2023年(令和5年)4月1日に公布された制度概要パンフレットのQ&Aに以下のように記載されています。

Q.求職者を直接募集(または求人サイトを利用)し、就職困難者を雇い入れる予定ですが、助成対象となりますか。

A.助成対象となりません。特定求職者雇用開発助成金は、事業主による就職困難者の雇入れを決定するためのインセンティブとしての効果を期待した制度であり、ハローワーク、特定地方公共団体、有料・無料職業紹介事業者等の職業紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して助成を行うものです。
なお、ハローワークのオンライン自主応募の場合も助成対象となりません。また、求職者を直接募集(又は求人サイトを利用)し、求職者から応募があった後に形式的な職業紹介により対象労働者を受けれた場合も同様に助成対象となりません。

制度概要パンフレット(厚生労働省、R5.4.1版)

障害者雇用にあたって、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の活用を希望する場合には、ハローワーク経由、または当該助成金の取り扱いが可能な民間エージェントを選んで採用するようにしましょう。

2.雇用保険一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること

大まかに言えば、正社員などのように雇用の継続が見込まれている雇用のみを対象とする、ということです。具体的にどの程度をもって継続というか、ということについては「対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であること」とされています。

正社員としての雇い入れる場合には、要件を満たすことは明確なのですが、取り扱いが難しいのは契約社員など雇用期間に定めがある雇用形態です。これまで、制度の運用ベースにおいては、「何をもって継続した雇用することが確実であると認めるのか」については個別ケースにより判断されており、「原則的に雇用継続が見込まれる契約社員雇用」の場合でも、助成金の申請書に付帯する別紙として「継続雇用の証明書」の提出をもって、認めているケースもあったようです。

しかし、2023年10月1日に公表された「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) 事業主向けQ&A」の問7にて以下の通り記載があり、実質的に支給要件がより厳密に運用することが示されました。

問7 雇用形態は有期雇用ですが、本人が望む限り更新します。助成対象となりますか。

答 特定求職者雇用開発助成金は、継続雇用することが確実である者として雇い入れることを要件としています。有期雇用の場合は、自動更新(本人が望む限り更新できること)のみを支給対象としています。自動更新の確認は、雇用契約書により行うため、雇用契約書には自動更新であることの記載が必要です。
また、雇用契約書に自動更新と記載されている場合であっても、本人の体調や勤務実績、業績等の更新の有無を判断する更新条件が付されている場合は助成対象となりません。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) 事業主向けQ&A(令和5年 10 月1日公表)

つまり、雇い入れた労働者本人が希望する場合には、例外なく企業は更新する「自動更新」の場合にのみ、特定求職者雇用開発助成金が適用されるということです。これは、実質的な支給要件の厳格化であり、雇用の初めの段階から正社員として雇い入れることを促進する意図があるものと思われます。

なお、雇用当初は契約社員として雇い入れ、数年後に無期雇用転換に切り替えたり、正社員に登用する場合であっても、あくまで雇用開始から起算して最大6か月以内の支給対象期間のみが対象となるため、無期雇用に転換した時点から特定求職者雇用開発助成金の受給をすることはできません。

※本稿の内容は、2023年11月に東京労働局に問い合わせを行い、記載した内容に誤りがないことを確認済みです。

3.その他の要件

これまでに記載した2点のほかにも、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の支給申請にあたっては、細かい要件が規定されています。非常に項目が多く、本記事で記載内容をすべて列挙するときりがないので、ここでは支給の要件に抵触することが多い事項に絞って記載します。

  • 採用日前後6か月間に事業主都合による解雇※をしていないこと(※勧奨退職を含む)
  • 雇い入れる労働者が、職業紹介時点で、在職者でないこと(ただし、重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者を一週間の所定労働時間が30時間以上で雇い入れる場合は例外として支給の対象となる)
  • 採用した事業所と関係のあった者でないこと(過去3年間に事業所で就労させたことがある場合や、親族の場合など)

その他にも、雇用関係助成金全般に共通する要件など、細かい規定がありますので、詳細については以下のリンク先をご参照ください。

参考:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の申請にあたって(PDF)

なお、他の助成金の支給を受けている場合は、支給対象とならない場合があります。繰り返しとなりますが、個別の事例が支給対象になるかどうかは、お近くのハローワークの窓口にお問い合わせください。

おすすめは「障害者トライアル雇用」との併用

前述の通り、2023年10月1日に公表された「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) 事業主向けQ&A」により、「継続して雇用する」ことについての運用が厳格されました。しかし、正社員雇用などの無期雇用については一定の見極め期間を経て判断をしたいと考えている企業様も多くいらっしゃるものと思います。そのような企業様におすすめな方法は「障害者トライアル雇用」との併用です。

障害者トライアル雇用は、障害者を原則3か月間試行雇用することで、適性や能力を見極め、継続雇用のきっかけとしていただくことを目的とした制度です。対象者1人当たり、月額最大4万円、精神障害者を初めて雇用する場合、月額最大8万円(いずれも最長3か月間)の支給を受けることができる制度です。特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) 事業主向けQ&Aには、以下の通り記載されています。

問 14 障害者トライアル雇用紹介により雇い入れた対象労働者を、トライアル雇用終了後も引き続き雇用する場合、障害者トライアル雇用助成金と本助成金の両方を受給することはできますか。

答 お尋ねのような場合、障害者トライアル雇用助成金の支給対象期間と重複するため、本助成金の第 1 期支給対象期分は受給できませんが、第 2 期支給対象期分から受給できます。なお、本助成金の支給申請に当たっても、雇入れ日はトライアル雇用開始日となります。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) 事業主向けQ&A(令和5年 10 月1日公表)

併用といっても、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)と障害者トライアル雇用とを重複して受給することはできませんが、トライアル雇用を通じて無期雇用しても大丈夫、という確認をとれた段階で、第2期目からより支給額が大きい特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)に切り替えることができます。トータルの支給額はやや低くなりますが、現行の制度においては最も合理的な手続きでしょう。

まとめ

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、雇用されることに困難があると思われる障害者などの雇用促進と、雇用の安定を目的とした助成制度です。2023年10月1日に公表された「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) 事業主向けQ&A」では、「継続して雇用すること」の要件がより厳格化され、障害者雇用の正社員化を促進する行政側の姿勢が示されました。制度の趣旨を理解したうえで、正社員雇用も視野に入れながら、適正に制度を活用していただければと思います。

Kaienでは、「本業に貢献する障害者雇用」をテーマに求人サイトマイナーリーグを介した人材紹介事業を行っています(有料職業紹介事業許可番号:13-ユ-304643、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)および障害者トライアル雇用助成金の取り扱いの事前申請済み)。障害者雇用をお考えの企業様はぜひお問い合わせください。

参考:障害者雇用の人材紹介


参考ウェブサイト(外部ウェブサイトに移動します)

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