【人事】障害者雇用の給料の決め方|平均額・相場について解説

障害者雇用を考えている企業は、給料の決め方に迷うことが多いのではないでしょうか。障害者雇用の給料の相場を知ることで、自社で障害者雇用を行う際にも給料の金額が決めやすく、迷うこともなくなるでしょう。

この記事では、障害者雇用における給与の平均、また業種別の給与平均と相場をご紹介します。あわせて、障害者雇用の給料を決める際に知っておきたい決まりごとや助成金、障害者雇用の現状についても触れるので、参考にしてください。

障害者雇用の給料を決める際に知っておきたいこと

障害者雇用の給料を決める際には、給料について定められたルールや、障害者雇用を行う場合に利用できる助成金について、あらかじめ知っておきましょう。それぞれについて詳しく解説します。

障害者雇用を理由に給与を低くするのは禁じられている

障害者雇用であることを理由に、給与をほかの社員よりも低く設定することは、障害者差別解消法によって禁じられています。

また厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」でも業務内容や責任範囲にしたがって、雇用契約形態に関わらず労働内容が同一となる場合は、原則として同一の賃金を支給することが定められています。

障害者雇用であるか、そうでないかに関係なく、担当する業務の内容や成果によって給与を設定することは問題ありません。つまり障害者雇用の給与の決め方は、障害者雇用でない雇用形態の従業員とまったく変わらないと考えて良いのです。

管理コストに困ったら助成金を利用しよう

障害者雇用では、そうでない雇用形態に比べて、管理コストや、障害に配慮をするために必要な一定のコストがかかる可能性があります。例えば、社屋および施設のメンテナンス・機器やソフトウェアなどの整備、雇用した障害者の雇用管理や援助を行うための人員配置などです。こうした追加コストを支援するために策定されているのが、助成金制度です。

助成金には、ハローワークなど特定の紹介所からの紹介によって障害者を継続雇用することで受けられる「特定求職者雇用開発助成金」、発達障害や難病のある方を雇用する際に受けられる「特定求職者雇用開発助成金」など、さまざまなものがあります。詳しい助成金制度については以下の記事を参考にしてください。

障害者雇用の現状について

現在は障害者雇用率が上がっているため、マーケット的には売り手市場であるといえます。

障害者雇用は、国や地方公共団体、都道府県等の教育委員会だけではなく、一定の規模を超えた民間企業にも法的に義務付けられているものです。民間企業の法定雇用率は2013年で2.0%だったものが、2018年には2.2%、2021年3月以降は2.3%、さらに2023年度には2.7%と引き上げられており、実際に民間企業に雇用される障害者数も増加の一途を辿っています。

採用の際、企業は業務の内容に応じた給与設定を行うことが義務付けられており、このような義務に違反する場合は採用できないのも障害者雇用の特徴です。

精神障害者保健福祉手帳を所持している障害者雇用の給与の平均は約14.6万円

厚生労働省が発表している『平成30年度障害者雇用実態調査結果』によれば、精神障害者保健福祉手帳を所持している方の障害者雇用における給与の平均は約14.6万円です。
障害者雇用での給料の相場は、業種や職種、仕事の内容によって変化します。あるいは雇用者側の事業規模が大きいか、小さいかといったことによっても左右されるものです。

また、実際の給与には地域格差も見られます。同じ障害者雇用の給与でも、首都圏の平均給与は他地域に比べて高くなる傾向です。後述の業種ごとの相場も、基本的には首都圏での求人における給与額を平均しています。したがって給与平均はあくまでも目安であり、実際に給料を決める際には事業所ごとに業務内容や地域性を考慮しながら決める必要があります。後述する業種別の相場も参照してください。

障害者雇用の給与が低いと言われる理由

障害者雇用の給与が低いと言われる原因には、「障害者雇用の給与は最低賃金程度」というイメージがまだ色濃く残っていることがあると考えられます。
実際、障害者雇用が義務化された当初は、最低賃金での求人が多くを占めていました。しかし法定雇用率の引き上げに伴って、障害者雇用で採用された従業員にもより広く多様な業務内容が任されるようになり、現在では障害者雇用全体の賃金も大きく変わってきています。

また、上述したように精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方の給与が一般枠雇用の平均と比較して低い理由には、雇用時間が短い、出勤日数が少ない、といったことが挙げられます。これは一般的な雇用で給与が低くなる原因と同じです。とりわけ障害者の場合、障害の特性にあわせて最適な勤務時間、勤務日数などを決める必要があります。そのため雇用時間が短くなったり、出勤日数が少なくなったりするケースも発生しています。

業種別の給与の平均・相場

それでは、ここで職種別の給料の平均や相場を確認してみましょう。

実際にKaienが運営する障害者雇用求人サイト「マイナーリーグ」に掲載された求人から、募集時の給与下限と給与上限の中央値をそれぞれ職種ごとにご紹介します。求人は首都圏地域のものが中心となっています。給与相場には地域差もあるため、ご参照のうえ、それぞれの地域事情に照らし合わせてみてください。

※参照 求人サイトマイナーリーグ

職種平均給与月額
一般事務約21.7万円
事務(専門)約26.4万円
IT系約26.0万円
クリエイティブ系約22.7万円
軽作業約16.4万円
接客・販売など約15.3万円
その他専門職約23.0万円
業種別の給与の平均・相場

それぞれの業種ごとで、より細かい分類でみた平均給与を細かくご紹介します。

一般事務

一般事務の業種別の給与平均・相場
一般事務職の全体的な平均給与額は約21.7万円です。

一般事務職の全体的な平均給与額は約21.7万円です。具体的には以下のような事務職に分類されます。

職種(小分類)平均給与月額
総務・庶務20.3万円
一般事務23.0万円
営業事務23.2万円
その他事務20.3万円
一般事務の業種別の給与平均・相場

庶務的な業務やサポート的な役回りが多い総務・庶務業務は、業務の性質上高いOAスキルが求められない場合が多いです。そのため給与も他の職種と比較して少し低めの相場になっているようです。一方で資料作成などOAスキルが求められることが多い一般事務や、一定の経験やコミュニケーション能力が期待される営業事務は高めの傾向です。

事務(専門)

事務(専門)系の業種別の給与平均・相場
専門事務職全体の平均給与額は約26.4万円です。

専門事務職全体の平均給与額は約26.4万円です。分野別の平均給与額は以下のとおりです。

職種(小分類)平均給与月額
人事/人事アシスタント24.3万円
翻訳・通訳25.9万円
法務/法務アシスタント26.3万円
企画・マーケティング関連26.4万円
経理/経理アシスタント27.2万円
その他 専門職(オフィス系)35.5万円
事務(専門)系の業種別の給与平均・相場

いずれの場合も専門色が強く、それぞれの分野で知識や経験を積み重ねる必要のある仕事です。それだけに、どの分野をとっても平均給与額は高くなる傾向です。

さまざまな専門分野のある「その他」を覗けば、最も平均給与額が高いのは経理/経理アシスタントです。この分野では帳簿や財務の知識が必要になるほか、経営関連の経験を問われることもあるでしょう。

IT系

IT系の業種別の給与平均・相場 
IT系の給料の平均は、約26万円です。

IT系の給料の平均は、約26万円です。細かい平均給与を見てみましょう。

職種(小分類)平均給与月額
テスター20.3万円
システム運用・保守21.1万円
プログラマ21.5万円
その他専門職(IT領域)24.8万円
ネットワークエンジニア25.0万円
システムエンジニア29.5万円
社内SE30.5万円
データアナリティクス35.0万円
IT系の業種別の給与平均・相場

最も給与水準が高いのはデータアナリティクスで、これは大量のデータから今後のトレンドや売れ行きのパターンを読み取る業務です。時には企業の意思決定にも関わる重要業務となるため、給与も高い傾向にあります。

一方、社内SEは自社内でシステムの保守運用、従業員に対するシステム関連のサポートなどを行う仕事で、専門性が高く給与も高水準です。

クリエイティブ系

クリエイティブ系の業種別の給与平均・相場
クリエイティブ系の全体的な平均給与額は約22.7万円です。

クリエイティブ系の全体的な平均給与額は約22.7万円です。詳細な平均給与は以下のとおりです。

職種(小分類)平均給与月額
映像制作・編集21.2万円
デザイナー21.4万円
ウェブデザイン22.8万円
ライター30.5万円
その他クリエイティブ関連17.6万円
クリエイティブ系の業種別の給与平均・相場

ライターの仕事はさまざまで、文章を書く仕事からコピーライティングまで幅があります。経験や実績があれば給与も上がりやすい傾向です。

ウェブデザインは、ウェブサイトのデザインや制作を担当します。要望にあった使い勝手の良いウェブサイトを作るにはセンスやアイデアも必要で、実績に応じて給与も上がりやすいでしょう。

軽作業

軽作業系の業種別の給与平均・相場
軽作業全体の平均給与額は約16.4万円です。

軽作業全体の平均給与額は約16.4万円です。軽作業のなかでも、それぞれの分野の平均給与は以下のとおりです。

職種(小分類)平均給与月額
PDF化作業15.3万円
ピッキング16.1万円
清掃16.1万円
メールセンター16.4万円
保管・倉庫内作業18.3万円
軽作業系の業種別の給与平均・相場

軽作業の仕事は障害者雇用であるかどうかに関わらず、シフト調整がしやすい業種です。軽作業は全体の給与平均が他の業種に比べて低い傾向にあります。

原因としては、体調管理等のために勤務時間を調整しているケースが一定数あると考えられるでしょう。

軽作業のなかでも、長時間勤務の多い保管・倉庫内作業は、平均給与額が高くなる傾向です。

接客・販売など

接客・販売系の業種別の給与平均・相場
接客・販売業務全体の平均給与額は、約15.3万円です

接客・販売業務全体の平均給与額は、約15.3万円です。それぞれの分野の平均給与は以下のとおりです。

職種(小分類)平均給与月額
販売・接客スタッフ14.8万円
品出し・店舗バックヤード15.2万円
その他営業・接客・販売15.6万円
飲食店スタッフ(接客・調理・仕込み)15.8万円
接客・販売系の業種別の給与平均・相場

いずれも分野によって大きな差は出ていないことがわかります。

接客・販売業は軽作業と同じく、時間的に調整をしやすい業務が多いです。体調ケアを考慮して短時間勤務を行っている人も多く、平均給与額にも影響していることが考えられるでしょう。

その他専門職

その他専門職の業種別の給与平均・相場
の他専門職の平均給与額は約23.0万円です。

その他専門職の平均給与額は約23.0万円です。その他専門職には、以下のようなものがあります。平均給与額もあわせてチェックしてみましょう。

職種(小分類)平均給与月額
看護アシスタント19.5万円
機械・電子設計21.1万円
CADオペレーター(電気・電子・機械)23.8万円
営業(企業向け)27.5万円
その他専門職の業種別の給与平均・相場

企業向けの営業職は、顧客となる企業の課題解決のためにアイデアを提案したり、ニーズを読んで新規の営業をかけたりする仕事です。インセンティブが出る場合もあり、平均給与額は上がりやすい傾向といえます。

CADオペレーターはCADソフトで設計図や完成図などを作成する仕事で、専門的な知識がなければ操作できないため引く手の多い人材です。

まとめ

障害者雇用における給料の考え方は、基本的には通常の雇用と変わりません。仕事内容、勤務時間、上げられる成果から、正当性のある給料を計算します。算出の際はそれぞれの業態、業種における平均給与額も参考にすると良いでしょう。

障害者雇用でお悩みの場合は、Kaienまでお気軽にご相談ください。Kaienでは障害者雇用に関するコンサルティングや採用・常駐支援を行っています。適切なサポートがあることで、障害者雇用による人材を大きな戦力として活用できる可能性があるでしょう。まずは資料をダウンロードし、気になる点はぜひお問い合わせください。

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