人口減少の深刻化や、ダイバーシティへの対応が求められる中、高齢者や障害者、求職者の雇用や労働者の職業能力の開発・向上の重要度は増加しています。とはいえ、企業内の人材や資本だけで適切な受け入れ体制を構築するのは難しいため、高齢者や障害者の雇用支援を行う「高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」の活用を検討しましょう。
本記事では、「高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」の概要や取り組み内容を解説後、障害者雇用に焦点を絞り、企業が知っておくべきことをご紹介します。具体的な支援や助成金についても理解でき、自社の問題を解決する糸口が見つかる内容なので、ぜひお役立てください。
このページの目次
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)とは?
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)は、高齢者や障害者、求職者の雇用を支援するための独立行政法人です。公式HPでは以下のように紹介されています。
“高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)は、高齢者の雇用の確保、障害者の職業的自立の推進、求職者その他労働者の職業能力の開発及び向上のために、高齢者、障害者、求職者、事業主等の方々に対して総合的な支援を行っています。”(原文ママ)
引用:高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)
つまり、高齢者や障害者、求職者が雇用を得られるようサポートすると同時に、企業の受け入れに関する支援も行い、お互いの負担を軽減する取り組みを行っているということです。
具体的な取り組み内容は次項で詳しくご紹介します。
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の取り組み
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の取り組みは大きく分けて以下の3つです。
- 高齢者雇用の支援
- 障害者の雇用支援
- 職業能力開発の支援
それぞれ具体的に解説します。
高齢者雇用の支援
高齢・障害・求職者雇用支援機構では、高齢者の雇用に対して以下のような支援を行っています。
- 70歳雇用推進プランナー等に関する相談・援助
…高年齢者が活躍できる環境整備を図る「改正高年齢雇用安定法」に即した雇用を実現するためのサポートを行う - 高齢者雇用に関する各種助成金制度の案内
…65歳超雇用推進助成金である「65歳超継続雇用促進コース」「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」「高年齢者無期雇用転換コース」の案内を行う - 高齢者雇用に関するイベント・啓発活動
…シンポジウムや高年齢者活躍企業コンテストの開催、高年齢者就業支援月間の実施などによる啓蒙活動を行う - 高齢者雇用に関する調査研究の紹介
…高齢者雇用や再就職支援に関わる問題についての研究や企業内の取り組みに活用できる支援ツールの開発などを行う - 産業別の取り組み
…これまでの取り組み、成果に基づいたガイドラインの制定や企業の取組事例などの公開を行う - 高齢者雇用に関する資料の案内
…事業者向け啓発誌の発行や事例集、研究報告書一覧の公開など、各種資料の案内を行う
以上のように、高齢者雇用に関する直接的な支援に加え、研究やデータの収集による継続的な改善活動を行っています。
参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)|事業主の方へ
障害者の雇用支援
次に、障害者の雇用に関する高齢・障害・求職者雇用支援機構の取り組みを紹介します。
- 雇用支援・相談窓口
…職業リハビリテーション専門機関や障害者雇用支援ネットワークコーディネーターによる助言やその他支援を行う - 職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援
…ジョブコーチによる職場での直接的な支援や企業および従業員への助言などを行う - 障害者雇用納付金制度
…障害者雇用の経済的負担を調整するための助成・援助を行う - 助成金(障害者雇用)
…上記、障害者雇用納付金制度に基づいて支給される助成金のこと。新規雇用に際し、施設や設備の整備が必要である場合の経済的負担を軽減し、雇用の促進・継続を図ることが目的 - 障害者雇用事例リファレンスサービス別ウィンドウ
…創意工夫された障害者雇用に関する企業の取組事例を紹介する
上記の他にもさまざまな支援を行っています。詳しい内容を確認したい方は、公式HPでご確認ください。
参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)|事業主の方へ
職業能力開発の支援
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、効果的な教育訓練が実施されるように、以下のような職業能力開発の支援を行っています。
- 求職者や在職者の方への職業訓練に関する案内
…求職者への公的職業訓練(ハロートレーニング)や、在職者への職業訓練の案内・実施 - 職業能力開発大学校等(ポリテクカレッジ)の職業訓練
…高度な知識と技能・技術を兼ね備える技能者の育成を目的とする専門課程(2年制)や、生産技術・生産管理部門のリーダー育成を目的とした応用課程(2年制)の実施 - 従業員の能力開発に関する相談・援助
…人材育成プランの提案や在職者の能力を開発するためのセミナーの実施 - 求職者支援制度による職業訓練の実施に関する情報等の提供
…職業訓練コースの検索など
以上のように、求職者や在職者の能力開発や人材育成を幅広く支援しています。
ここまで解説した3つの項目に関する支援を理解し活用することで、高齢者や障害者が企業で活躍できる体制を作り、効果的な雇用を実現できるでしょう。
参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)|事業主の方へ(生産性向上人材育成支援センター)
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)について企業が知っておきたいこと
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)について、障害者雇用を行う上で企業が知っておきたいことは以下の5つです。
- 障害者雇用のノウハウが学べる
- ジョブコーチ支援が受けられる
- 助成金が受けられる
- 障害者雇用事例リファレンスサービスで障害者雇用の事例を学べる
- 職場雇用の好事例の公募を行なっている
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)を活用するために押さえておきたい各項目を詳しく解説します。
障害者雇用のノウハウが学べる
企業・求職者お互いが満足できる雇用を実現するためには、障害者雇用のノウハウを体系的に理解しておくことが重要です。高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、「はじめての障害者雇用〜事業主のためのQ&A〜」と題し、障害者雇用で押さえておきたい知識を解説しています。
具体的な項目は以下のとおりです。
- 障害者雇用の基礎理解
- 採用計画の検討・採用の準備
- 募集活動・社内支援の準備
- 職場定着のための取り組み
- 障害特性と配慮事項
- 就労支援機関
- 制度や助成金などに関する資料
- 企業用自己診断チェックシート
- 関連するリンクの紹介
Q&Aを一通り読むことで、障害者雇用に関する幅広い知識を付けられるほか、不明点がある際に検索すれば問題の解決にも役立ちます。
ジョブコーチ支援が受けられる
ジョブコーチとは、障害者が職場に適応できるように、具体的な目標設定や支援計画を策定しサポートを行うことです。支援を行うことで、事業所の支援体制の構築を推進し、障害者の定着率を高めることを目的としています。
ジョブコーチの種類は、地域障害職業センターに配置する「配置型ジョブコーチ」や社会福祉法人等に雇用される「訪問型ジョブコーチ」、企業に雇用される「企業在籍型ジョブコーチ」の3つです。高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)でのジョブコーチ支援は、「配置型ジョブコーチ」に該当します。
具体的な支援内容は以下のとおりです。
- 障害者職業カウンセラーによる支援計画の策定
- ジョブコーチの派遣
- 障害者・企業・家族への支援
- 段階に応じた支援の実施
- 支援終了後のフォローアップ
以上の支援は2〜4ヶ月程度を目安に行われます。
参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED):職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援
助成金が受けられる
障害者を雇用する際、一定の条件を満たすことで障害者雇用納付金制度に基づく助成金を受け取ることができます。この助成金は、障害者の継続的な雇用に必要となる経済的な負担を調整し、障害者雇用の促進を図ることが目的です。助成金の具体的な種類を、「障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金のごあんない」の内容に沿って紹介します。
助成金の種類は大きく分けて以下の6つです。
- 障害者作業施設設置等助成金
・作業設備の設置・整備に対する助成金 - 障害者福祉施設設置等助成金
・障害特性に配慮した施設の設置・整備に対する助成金 - 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
・重度障害者を多数継続して雇用するために必要な施設の設置・整備に対する助成金 - 障害者介助等助成金
・障害者の特性に応じた雇用管理に必要な介助に対する助成金 - 職場適応援助者助成金
・職場への適応に課題のある障害者に対し、職場適応援助者による支援に対する助成金 - 重度障害者等通勤対策助成金
・障害の特性による通勤等の課題を軽減・解消するための措置に対する助成金
助成金の対象となる障害者や手続きの流れ、限度額などの詳しい内容は、「障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金のごあんない」でご確認ください。
また、各種助成金の活用方法を掲載している「助成金活用事例」も閲覧できます。
障害者雇用事例リファレンスサービスで障害者雇用の事例を学べる
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、障害者雇用での事例を業種別・障害別に確認できる「障害者雇用事例リファレンスサービス」を利用できます。障害者雇用の最適化を図るには、自社の業種や雇用する障害者の特性に適した対策を行うことが大切です。「障害者雇用事例リファレンスサービス」を活用することで、各企業の障害者雇用に対する幅広い対応を確認できます。
検索する際は、以下の項目を選択して自社の状況に類似した事例の検索が可能です。
- 企業の全体的な取り組みや、個別の特性に配慮した取組事例などの種別の選択
- 業種の選択
- 障害の種類の選択
- 掲載している媒体の選択
- 従業員規模の選択
- フリーワードでの検索
業種別・障害別に事例を確認できるため、障害者雇用を行う際の参考にできます。
職場雇用の好事例の公募を行なっている
障害者雇用の改善や工夫などの取り組みを行っている事業者の中から、参考になるよい事例を募集する「障害者雇用職場改善好事例募集」を行っています。例えば、「支援人材のスキルアップや管理部門によるフォロー体制を構築した」や「社内外の支援人材の役割分担を明確化し、定着支援体制を構築した」などの対応です。
応募者の中から「優秀賞」や「奨励賞」が選ばれ、受賞することで企業イメージの向上につながります。
地域障害者職業センター
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)は、各都道府県で地域障害者職業センターを運営しています。地域障害者職業センターは、障害者に対する専門的なリハビリテーションサービスや、企業、地域の関係機関に対して障害者の雇用管理に関する相談・助言・援助を実施している施設です。
各機関が協力して障害者のニーズに合わせた職業リハビリテーションを提供し、専門性の高い支援を実現しています。障害者職業カウンセラーや相談支援専門員などの専門家に相談できるので、障害者雇用に課題を抱えている方は活用してみるとよいでしょう。
まとめ
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)は、高齢者や障害者、求職者の雇用を支援している機関です。求職中の個人や高齢者、障害者雇用に課題を感じる企業のサポートをすることで、職業的自立の促進や企業の受け入れ体制構築における負担の軽減を実現します。
企業において、高齢者・障害者の雇用や定着は、法令遵守やダイバーシティ、人材の確保などの面で重要な要素です。特に、障害者雇用は業務内容や設備面での課題を抱える企業担当者の方は多いのではないでしょうか。高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)のサポートや助成金を上手に活用し、よりよい雇用環境の構築を目指しましょう。
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