ジョブコーチ(職場適応援助者)とはどんな制度?わかりやすく解説

障害者雇用の社内体制やノウハウがなく、うまく受け入れができないとお悩みではありませんか。
障害者の職場の定着をさまざまな面からサポートする役として、ジョブコーチが存在します。


この記事では、ジョブコーチの種類と支援内容、対象者、費用などをまとめました。
ジョブコーチは国が行う支援事業のため、助成金制度も活用できます。
障害者雇用でお困りの方は、ぜひ参考にしてください。

ジョブコーチ(職場適応援助者)とは?

ジョブコーチ(職業適応援助者)は、障害者に対して職場での対応やスキルの向上などをサポートする人のことです。
ジョブコーチ支援は要請があった企業に対して地域障害者職業センターから派遣され、障害者や事業者、障害者の家族に対して、職場に適応するために支援計画を立ててサポートする公的なサービスです。
障害者雇用の促進や、職業の安定を目的としておこなわれています。


障害者の特性や働く環境によって支援内容や期間はさまざまですが、障害者と企業側のサポートを行うのがジョブコーチの役割です。

ジョブコーチ支援の内容

ジョブコーチの仕事内容はサポートする人の属性によって、主に4つに分けられます。

サポート対象ジョブコーチの仕事内容
事業主・障害者の特性を配慮した雇用管理に関するアドバイス
・配置・職務内容の設定に関するサポート
上司・同僚・障害者への理解に関わる社内啓発
・障害者との関わり方に関するアドバイス
・指導方法に関するアドバイス
家族・安定した職業生活を送るための家族の関わり方に関するアドバイス
障害者・職務遂行力の向上サポート職場内のコミュニケーション能力向上サポート
・健康管理・生活リズムの構築サポート
ジョブコーチ支援の内容一覧

事業主が障害者のトライアル雇用を利用した際も、ジョブコーチの支援が受けられます。
トライアル雇用とは、試験的に障害者の雇用を受け入れて、本格的に障害者雇用する足がかりにする制度です。
実施する期間は原則3か月で、障害に関する知識や雇用経験がない事業主に対して行います。

ジョブコーチ支援の対象者

ジョブコーチの支援対象になるのは、障害を持っていて以下のような悩みを抱えている求職者・在職者です。

  • 自分にあった業務内容を見つけたい
  • 就職したけどなかなか職場環境に慣れない
  • 障害の特性に合った支援をしてほしいが職場への伝え方がわからない など

支援するにあたって、障害者手帳の有無は問われず、障害者と職場の双方の合意が必要です。
障害を持つ方の勤務時間が、サポート終了時点で週20時間以上になることを目標とするのが条件とされています。
公務員の場合は、非常勤職員や臨時職員として働いていて、雇用保険に加入している人が対象です。

ジョブコーチ支援の費用

ジョブコーチ支援の利用料金は、基本的に無料です。
障害者職業センターから派遣されるジョブコーチにサポートを依頼する場合は、1〜8か月の間で必要な期間支援を受けられます。

また、自社社員が研修を受けてジョブコーチとして活動することもできます。
(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の研修費用は無料です。
一方で、大臣指定の研修の費用は5万円前後です。

ジョブコーチの種類

ジョブコーチの種類を表にまとめました。

ジョブコーチの種類特徴
配置型ジョブコーチ地域障害者職業センターに配置するジョブコーチ
訪問型ジョブコーチ障害者の就労支援を行う社会福祉法人などで活躍するジョブコーチ
企業在籍型ジョブコーチ障害者を雇用する企業で雇用されるジョブコーチ
ジョブコーチの種類一覧

3つの中でも、特に企業の障害者雇用と関係が深い「訪問型ジョブコーチ」と「企業在籍型ジョブコーチ」について、依頼の流れや、研修の方法について詳しく説明します。

訪問型ジョブコーチ

訪問型ジョブコーチを担当するのは、高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施する「訪問型職場適応援助者養成研修」や、厚生労働大臣が定める「訪問型職場適応援助者養成研修」を修了した方です。
障害者の就労支援に関する業務に1年以上就業した経験が求められます。
それでは、訪問型ジョブコーチの目的と役割、支援を依頼するまでの流れを見ていきましょう。

訪問型ジョブコーチの目的と役割

訪問型ジョブコーチは社会福祉法人などに在籍し、依頼のあった企業を訪問して就労支援を行います。
具体的な役割は、下記のとおりです。

  • 障害者の特性を配慮した雇用管理や配置、職務内容の設定に関するサポート
  • 上司や同僚に対して指導方法のアドバイス

また、就労移行支援事業所に在籍するジョブコーチも訪問型に含まれます。
訪問型ジョブコーチは就労移行支援授業などでさまざまな支援経験を積んでいるため、幅広い状況や課題に対するサポートが可能です。

訪問型ジョブコーチの支援までの流れ

訪問型ジョブコーチの支援を利用する流れは、次のとおりです。

1.相談
まずは本人や事業所の方と話し合い、職場での状況を把握し、ヒアリングした情報をもとに支援方法や期間、頻度などの支援計画を作成します。

2.支援計画の説明
作成した支援計画について本人と事業所に説明します。

3.ジョブコーチ支援の実施
支援計画に同意が得られたら支援スタートです。支援計画に沿ってジョブコーチが職場を訪れて、具体的に支援を行います。

4.フォローアップ
支援期間が終了した後も職場内で支援が継続されることを目指してフォローアップし、必要に応じて再支援を検討します。

相談してからサポート開始までは2週間〜1か月前後かかるため、支援を検討している場合は早めに相談しましょう。

企業在籍型ジョブコーチ

企業在籍型ジョブコーチは、障害者を雇用する企業に直接雇用されて障害者の就労を支援します。
支援内容は、基本的には訪問型ジョブコーチと同じです。
ただし、実際に障害者が勤める企業で雇用されているもの同士なので、よりきめ細やかなサポートができます。
企業在籍型のジョブコーチ養成研修について、こちらの記事でも詳しく紹介しているため、ぜひご覧ください。

企業在籍型ジョブコーチについて詳しく見ていきましょう。

企業在籍型ジョブコーチの目的と役割

企業在籍型ジョブコーチは、訪問型ジョブコーチと同様に、障害者が職場に適応できるように本人や上司、同僚、家族に適切なサポートを行います。
利用される主な目的は、障害者の職場定着支援を強化したり、積極的に障害者雇用を推進したりするためです。

企業が企業型ジョブコーチを社内に配置したいと考えた場合は、ジョブコーチの資格を持った人を新たに雇い入れるか、既存の従業員にジョブコーチの資格を取得させるか、のいずれかの対応となります。
社内でジョブコーチになる予定の方は、職場適応援助者養成研修を修了し、地域障害者職業センターと支援計画の作成・承認がされた後に支援をスタートできます。

企業在籍型ジョブコーチの研修を受ける流れ

企業在籍型ジョブコーチになるために必要な研修は、以下の2種類です。

研修の種類料金実施先詳細ページ
高齢・障害・求職者雇用支援機構無料企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修
民間の研修機構有料NPO法人ジョブコーチ・ネットワーク
NPO法人大阪障害者雇用支援ネットワーク
NPO法人なよろ地方職親会
NPO法人くらしえん・しごとえん
社会福祉法人あしーど
社会福祉法人南高愛隣会
企業在籍型ジョブコーチになるために必要な研修の種類

高齢・障害・求職者雇用支援機構の研修に申し込むには、申請書に必要事項を書いて、受付期間内に事業所の長から、地域の障害者職業センターに郵送します。
個人での申し込みは受け付けていない点にご注意ください。
一方で、民間の研修機構はそれぞれ申し込み方法が異なるため、詳しくは厚生労働省の「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について」をご確認ください。

ジョブコーチに利用する際の助成金制度

企業在籍型のジョブコーチを利用する際は、必要に応じて以下2つの助成金制度を活用できます。

  • 障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)
  • 障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コースのうち「職場支援員の配置」にかかる助成)

各助成金の対象者と支給額などは表のとおりです。

障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)の対象者と支給額

対象労働者支給額(1人あたりの月額)
障害者短時間労働者以外の者中小企業12万円中小企業以外9万円
短時間労働者中小企業6万円中小企業以外5万円
障害者以外中小企業8万円中小企業以外5万円
中小企業4万円中小企業以外3万円
障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)の対象者と支給額

※支給額は企業規模によって異なる

詳しくは厚生労働省の「障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)」をご確認ください。

障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コースのうち「職場支援員の配置」にかかる助成)の対象者と支給額、対象期間

支給対象者支給月額支給対象期間各支給対象期における支給額(最大)
短時間労働者以外の者4万円(3万円)2年(2年)※精神障害者の場合は3年24万円×4期(18万円×4期)※精神障害者の場合6期
短時間労働者2万円(1.5万円)2年(2年)※精神障害者の場合3年12万円×4期(9万円×4期)※精神障害者の場合6期
障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コースのうち「職場支援員の配置」にかかる助成)の対象者と支給額、対象期間

詳しくは厚生労働省の「障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)」をご確認ください。

ジョブコーチ支援を利用する際の注意点

ジョブコーチ支援を利用する際に大切なのは、支援機関の職員だけでなく、障害者の家族や親族も含めた周囲のサポートです。

ジョブコーチは、実際に会社に雇用されるまでは会社と障害者の仲介役になります。
また、障害者雇用の担当者と支援者がうまく付き合うには、社内の細かいルールや規則を事前に共有しておくことが重要です。
レポートなどにまとめると、今後障害者を雇用する際にも役立ちます。

支援者にも支援できることとできないことがあるため、納得のいく支援をしてもらえるように、企業側が求める内容を明確にしておきましょう。

まとめ

ジョブコーチは、障害者雇用の促進や職業の安定を目的として、障害者と企業、家族のサポートをする仕事です。

障害者雇用をお考えの方は、ジョブコーチ支援の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

また、障害者雇用をお考えの方はKaienにもご相談ください。

弊社は障害者雇用の総合コンサルティングや常駐支援を行っており、障害者雇用のノウハウがなくても採用の入口からまるっとお任せいただけます。

障害者人材の採用担当者向けのハンドブックや面接評定シート、事例集などお役立ちコンテンツも配布しておりますので、ぜひご活用ください。

この記事を書いた人

大野順平

株式会社Kaien 就労支援事業部 法人サービス担当
ゼネラルマネージャー / シニアディレクター

2014年Kaien入社。採用支援、定着支援、社内啓発など、これまで20社以上の精神・発達障害人材の雇用推進プロジェクトに参画。

論文寄稿 :

月刊精神科「就労支援におけるneurodiversity」(2023年9月,科学評論社)

取材対応 :

SNS :

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