障害者差別解消法における合理的配慮とは?障害者雇用促進法との違いを解説

2023年3月、改正障害者差別解消法の施行日が閣議決定されたことをうけ、「合理的配慮」に関する世間的な関心が高まりつつあります。改正障害者差別解消法により、企業は「障害者雇用促進法」において求められてきた「合理的配慮」とは異なる場面においても配慮の提供に応じる義務が発生します。

今回は、障害者差別解消法において求められる「合理的配慮」の内容や範囲、「障害者雇用促進法」との違いなどを詳しく解説します。

合理的配慮とは?

障害者差別解消法における「合理的配慮」とは、社会にあるバリアを取り除くために障害者から何らかの対応を求められた際、役所や事業者に対して負担の重すぎない範囲で対応を求めるものです。

障害者差別解消法は、2006年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」における、以下の考えを取り入れています。

「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

引用:障害者の権利に関する条約 第2条

また、2024年4月には障害者差別解消法の改正法が施行され、民間事業者において「努力義務」とされていた合理的配慮の提供が、役所などと同等に「法的義務」に変更されます。

合理的配慮を定めている法律は「障害者差別解消法」「障害者雇用促進法」の2つ

障害者に対する合理的配慮を求める法律には、「障害者差別解消法」のほかに「障害者雇用促進法」があげられます。それぞれの違いについて詳しく見ていきます。

障害者差別解消法障害者雇用促進法
概要障害のあるなしに関わらず、その人らしさを認め合いながら生きられる「共生社会」の実現を目指す法律。行政や事業者に対して、正当な理由なく障害者を差別する「不当な差別的取扱い」の禁止や「合理的配慮の提供」を求める。すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指す法律。行政や事業者に対して障害を理由とした「不当な差別的な取り扱い」の禁止や「合理的配慮の提供を求めるもの。
対象となる障害者障害者手帳の有無に関わらず、何らかの障害があり、社会の中のバリアによって日常生活や社会生活に相当な制限を受けているすべての人(障害児を含む)。身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者。
合理的配慮の内容・障害者からバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意志を伝えられたとき、負担の重すぎない範囲で対応すること・負担が重すぎるときでも、障害者にその理由を説明し、別の方法を提案するなど、話し合いや理解を得るよう努めること・募集および採用時において、障害者と障害者でない人を区別せず均等な機会を確保すること
・採用後においては、障害者と障害者でない人の均等な待遇の確保、または障害者が能力を発揮するために支障となっている事情を改善すること
施行状況現行法では合理的配慮の提供について、民間企業は「努力義務」としている。2024年4月に施行される改正法では、民間企業においても「法的義務」が発生する。2016年に施行された改正法において、民間企業においても合理的配慮の提供が義務化された。

大きな違いとして、障害者差別解消法における合理的配慮は「日常生活や社会生活を送る上での障壁を取り除く措置」を指していますが、障害者雇用促進法においては「雇用における均等な機械の提供と、職場において障害者が能力を発揮するために必要な障害を取り除く措置」を指している点があげられます。

障害者差別解消法における差別の例

障害者差別解消法では、障害者に対して、障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止しています。差別的取扱いの具体例としては、以下があげられます。

  • サービスの提供や受付対応を拒否する
  • サービス提供あたって場所や時間帯などを制限する
  • 障害者本人を無視して、介助者や支援者、付き添いの人だけに話しかける
  • 学校の受験入学を拒否する
  • 保護者や介助者が同伴していないと入店を拒否する

参考元①:【全体】リーフレット「「合理的配慮」を知っていますか?」 印刷用
参考元②:合理的配慮の提供の例

障害者差別解消法における合理的配慮の例

障害者差別解消法における「合理的配慮」とは、どのような行動が該当するのでしょうか。具体的には、以下の例があげられます。

  • 聴覚障害のある人を字幕や手話通訳者の近くに座らせるなど、障害特性に応じて座席を決める
  • 「字を書くのが難しいので代筆してほしい」と伝えられたとき、代わりに書くことに問題がない書類であれば、内容を十分に確認しながら代筆する
  • 意思疎通の手段として、絵・写真が印刷されたカードやタブレット端末を使う
  • 段差がある場所は、スロープなどを設置して補助する

参考元:合理的配慮の提供の例

合理的配慮について人事担当者が備えておくべきこと

前述でも触れた通り、2024年4月に「改正障害者差別解消法」が施行され、「合理的配慮の提供」が民間企業に対しても義務化されます。これにより、「合理的配慮」に対する社会的認知が深まり、障害者から対応を求められるケースが増えることが予想されます。

これまでも「障害者雇用促進法」において、企業には合理的配慮が求められてきましたが、今後はサービス提供面においても合理的配慮の提供が必須となります。人事部だけでなく全社的に合理的配慮に対する理解度を高める必要があり、従業員研修などの対応を講じる企業も出てくるでしょう。

合理的配慮について人事担当者が行うべき対応については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひチェックしてください。

まとめ

改正障害者差別解消法の施行に伴い、合理的配慮の提供を求められる機会が増えることが予想されます。合理的配慮の提供を拒否することは「法律違反」となりますので、サービスを提供する従業員に研修を実施するなど、全社的な理解促進に努める必要があるでしょう。

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この記事を書いた人

大野順平

株式会社Kaien 就労支援事業部 法人サービス担当
ゼネラルマネージャー / シニアディレクター

2014年Kaien入社。採用支援、定着支援、社内啓発など、これまで20社以上の精神・発達障害人材の雇用推進プロジェクトに参画。

論文寄稿 :

月刊精神科「就労支援におけるneurodiversity」(2023年9月,科学評論社)

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