
障害者雇用でミスマッチが起こる主な理由は、業務内容や本人の特性、働き方の条件が採用前後でうまく噛み合わないことにあります。本人が思い描いていた働き方と実際の勤務条件が異なっていたりすると、少しずつ違和感が積み重なり、結果として職場になじみにくくなることがあります。
ただし、これらのズレは採用時の見極めや入社後の丁寧なフォローによって防いだり、改善できたりするケースも少なくありません。本記事では、障害者雇用におけるミスマッチが起こりやすい具体例や活用できる支援機関について解説します。
このページの目次
障害者雇用で起こりやすいミスマッチ例は?

まずは、障害者雇用で起こりやすいミスマッチ例を紹介します。
- 業務レベルと本人の能力が一致していない
- 個人の特性と職場環境の相性が合わない
- 希望する働き方と職場の実態が一致していない
業務レベルと本人の能力が一致していない
業務レベルと本人の能力が合っていない場合、次のようなズレが生じやすくなります。
- 業務の難易度が高すぎて負担やミスが増える
- 仕事内容が簡単すぎて意欲が続かない
- 業務量がスキルと噛み合わず評価しにくい
- 負担感・退屈感が強まり、定着の不安が高まる
障害のある方は得意・不得意の差が大きいこともあり、採用時の印象だけで実務能力を正確に把握するのは難しい場合があります。そのため、ミスマッチを感じた段階で早めに本人と状況を確認し、業務範囲や難易度などを見直すことが重要です。
必要なサポート体制を整えることで、過度な負荷やモチベーション低下を防ぎ、定着につながりやすい環境をつくれます。
個人の特性と職場環境の相性が合わない
個人の特性や障害の状況と職場環境が合っていない場合、次のようなミスマッチが生じやすくなります。
- 静かな環境を好む人が、にぎやかな職場で集中できない
- 自分のペースで仕事したい人が、細かな指示や干渉でストレスを抱える
- 感覚過敏のある人が、音や人の動きが多い環境で負荷を感じる
- 必要な配慮(拡大読書機器など)が整わず、業務遂行が難しい
ミスマッチは本人の努力不足ではなく、環境との相性が合っていないだけというケースが多くあります。実際、障害のある社員が離職理由として、職場の雰囲気や人間関係の不一致を挙げる例は少なくありません。
環境が個人の特性に合っていないまま働き続けると、孤立感やストレスが強まり、本来の力を発揮できなくなります。違和感を覚えた段階で、働き方や座席配置、コミュニケーション方法などを見直し、必要な配慮が機能しているかを確認することが重要です。
希望する働き方と職場の実態が一致していない
本人が望む働き方と、実際に任される業務・労働条件が食い違うと、次のようなズレが起こりやすくなります。
- 自分のペースで働きたいのに、予想以上にスピードやノルマが求められる
- 柔軟な働き方を希望していたのに、出社前提で勤務条件に自由度がない
- 残業の有無や勤務時間が想定と異なり、負担が大きくなる
- 高度な業務に挑戦したいのに、単純作業が中心でやりがいを感じられない
ミスマッチは、採用時の相互理解が不足している場合に生じやすく、話が違うといった不信感やモチベーション低下につながります。とくに障害のある社員の場合、働き方の希望は業務遂行に大きく影響するため、希望とのズレを放置すると早期離職や戦力化の遅れを招く恐れがあります。
違和感を覚えた際は、本人がどの働き方を優先したいのか、業務内容と条件のどこにギャップを感じているのかを丁寧に確認し、調整の余地がある部分を明確にすることが重要です。
障害者雇用でミスマッチを起こさないためのポイント

ここでは、ミスマッチを防ぐために、障害者雇用において企業が注意すべきポイントを確認しましょう。
- 求める業務内容とスキル要件を明確にし、適材を採用する
- 特性に合った業務の進め方や支援方法を設計する
- 日常的な対話とフォローでズレを早期に察知する
求める業務内容とスキル要件を明確にし、適材を採用する
ミスマッチを防ぐには採用段階で、任せる業務の明確化や業務に必要なスキルは何かを明確にしておくことが重要です。募集時点で要件が曖昧なままだと、候補者との認識にズレが生まれ、入社後のギャップにつながります。
採用時に整理しておきたいポイントは以下のとおりです。
- 任せる業務内容と求めるスキル・経験を具体的に提示する
- 面接の印象だけで判断せず、実技・トライアル・職場体験で実務能力を確認する
- スキルの凸凹を前提に、候補者と企業の双方が適性を確認できる機会を設ける
- ハローワークや就労支援機関に同席を依頼し、客観的な視点を取り入れる
障害のある方は、実務は得意でもコミュニケーションは苦手など、能力に差が出やすい場合があります。そのため、実習やトライアル雇用で実際の働きぶりを確認しておくことは、ミスマッチを防ぐうえで効果的です。
実習の組み立て方やチェックポイントについて、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
■【ノウハウ】障害者雇用の職場実習を成功させるための3つのポイント
特性に合った業務の進め方や支援方法を設計する
採用後は、社員一人ひとりの特性に合わせて業務の進め方や支援方法を調整しましょう。画一的な指導では力を発揮しにくいため、本人が働きやすい形に合わせて環境ややり方を整えていくことが重要です。
特性に合わせて工夫できるポイントには、次のようなものがあります。
- 集中力に波がある人には、タスクを細かく分けて段階的に指示する
- 聴覚過敏がある人には、静かな座席配置やイヤホンの使用を認める
- 認知特性に合わせて、マニュアルの見える化や手順書の整備を行う
また、上司や人事担当者が定期的に1on1ミーティングで本人の思いを確認することも重要です。「最近の困りごとはないか」「業務の進め方で改善したい点はあるか」など具体的に聞き取り、その内容をもとに業務量やサポート体制を見直しましょう。
1on1ミーティングのポイントについて、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
■上司が精神・発達障害がある社員との1on1ミーティングで聞き取るべきこと
日常的な対話とフォローでズレを早期に察知する
どれだけ採用時にマッチングへ配慮しても、実際に働き始めると小さなズレが生まれることは珍しくありません。重要なのは、ズレを放置せず、日常的な対話やフォローを通じて早い段階で気付くことです。
ズレの早期発見に役立つ取り組みとして、次のような方法があります。
- 定期的な面談で、不安や困りごとを言語化してもらう
- 相談役となる先輩社員をつけ、気軽に話せる相手を用意する
- チャットや匿名アンケートなど、対面以外の伝達手段も確保する
加えて、職場全体で困ったらすぐ相談していいという雰囲気作りも大切です。安心して声を上げられる環境があるほど、本人は小さな違和感を共有しやすくなります。上司や周囲の社員も、日頃から表情や行動の変化に気を配り、調子が優れない様子があれば早めに声をかけましょう。
障害者雇用のミスマッチ防止に使える支援機関は?

障害者雇用でミスマッチが生じた場合、企業だけで抱え込む必要はありません。国や自治体が設置する公的支援機関を活用すれば、業務設計の見直しや定着支援、本人との調整などを専門的にサポートしてもらえます。
ここでは、企業が利用しやすい主な支援機関と、活用ポイントを紹介します。
障害者就業・生活支援センターに相談する
自社だけではミスマッチの原因や対処法を判断しにくい場合、外部の公的支援機関を活用することが有効です。
相談先の1つが障害者就業・生活支援センターです。全国に約330か所設置されており、障害のある本人と企業の双方を支援しながら、就労と生活の両面から定着をサポートしてくれます。
障害者就業・生活支援センターには、次のようなメリットがあります。
- 企業・本人双方の相談に対応しており、状況整理や課題把握を手伝ってくれる
- 相談は原則無料で、障害者雇用の経験が浅い企業でも利用しやすい
- 必要に応じて、ジョブコーチや専門機関など他の支援サービスと連携してくれる
コミュニケーションのすれ違いが続いている場面で、センター職員が企業と本人の間に入って誤解を調整してくれるなど、第三者としての役割を果たすこともあります。
社内だけで解決しようとせず、外部の客観的な視点を取り入れることで、ミスマッチの改善がスムーズになるケースは少なくありません。
外部機関の上手な活用方法について詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にしてください。
■障害者雇用で「困った」時に頼れる!外部の専門機関と相談のコツ
地域障害者職業センターに業務設計を依頼する
障害者雇用に専門的な知見を持つ公的機関として、地域障害者職業センターの活用も有効です。各都道府県に1か所設置されており、企業の障害者雇用を職業面から専門的に支援してくれます。
地域障害者職業センターには障害者職業カウンセラーが在籍しており、社員の特性や能力を踏まえた業務設計や指導方法について助言を受けられます。
地域障害者職業センターに依頼すると、次のような支援が期待できます。
- 特性に合った業務の組み立て方や作業手順の見える化に関する助言
- 生産性を保ちながら負担を減らすための業務調整の提案
- 職業評価によって社員がどの作業で能力を発揮しやすいかの客観的な把握
- 必要に応じた職場訪問のうえで、業務配分や配置転換に関する具体的なアドバイス
企業だけでは見落としやすい視点で助言をもらえるため、従業員に任せてもいい業務範囲や調整すべき箇所が明確になるでしょう。また、職場適応援助者(ジョブコーチ)の派遣も、地域障害者職業センターを通じて依頼できる場合があります。
社内で工夫してもミスマッチが解消しないときは、専門家の視点で業務内容を見直してもらうことが効果的です。
ジョブコーチによる現場支援を受ける
現場での支援策として、職場適応援助者(ジョブコーチ)の派遣を受ける方法があります。ジョブコーチは、障害のある社員が職場で力を発揮できるよう、実際の現場で業務の進め方や働き方をサポートする専門スタッフです。社員本人への指導だけでなく、企業側への助言や調整も行い、両者をつなぐ役割を担います。
ジョブコーチが行う支援には、次のような内容があります。
- 業務手順を覚えられるよう、実作業に寄り添いながら指導する
- 本人の不安や課題を聞き取り、働き続けやすい環境づくりを支援する
- 同僚や上司に対して、特性に応じた関わり方を助言する
第三者が加わることで、本人は安心して課題を相談でき、企業側も専門的な視点から具体的な改善策を得やすくなります。公的制度を利用すれば費用負担も抑えられるため、ミスマッチの改善が進まない場合や、現場のサポート体制に不安がある場合は、積極的に活用したい支援のひとつです。
ハローワークで採用・定着の相談を行う
障害者の採用や定着で悩んだときは、ハローワーク(公共職業安定所)に相談することも有効です。ハローワークには障害者雇用を担当する専門窓口があり、企業の状況に応じて幅広いサポートを受けられます。
ハローワークに相談すると、次のような支援を受けられます。
- 障害者トライアル雇用などミスマッチを減らす制度の紹介
- 定着に向けた支援策や働き方の工夫についての助言
- 合理的配慮の具体例や活用できる助成金の案内
- 専門機関(職業センター・就業生活支援センター等)との連携支援
ハローワークでは、「続けてもらえるか不安」「配置転換を検討しているが進め方がわからない」といった悩みにも、担当者が状況を踏まえた対応策を考えてくれます。ハローワークは、企業の法定雇用率達成を支援する立場でもあるため、親身に相談に乗ってくれるでしょう。
相談は無料で、早めに利用するほど適切な選択肢を取りやすくなります。社内だけで判断が難しい場合は、公的なサポートを積極的に活用することが、ミスマッチ解消への近道となります。
障害者雇用コンサルティング会社に支援を依頼する
公的機関だけでなく、障害者雇用を専門とする民間のコンサルティング会社に依頼する方法もあります。民間企業ならではの柔軟性と専門性があり、各社の状況に合わせた実務レベルの支援を受けられる点が特徴です。
コンサルティング会社では、次のような支援を依頼できます。
- 障害のある社員の業務切り出しやマニュアル整備の代行
- 管理職・社員向けの障害理解研修や接し方の研修
- 在籍社員の定着状況を定期的にヒアリング・改善策をフィードバック
- 社内だけでは見落としやすい部分への専門的アドバイス
公的支援だけでは対応が難しい場面でも、民間ならではのきめ細かなサポートで補える点が大きな魅力です。費用は発生しますが、その分、実務に落とし込みやすい提案や継続的な伴走支援を受けられるため、社内で解決が難しい課題を抱える企業にとって頼れる選択肢になります。
なお、コンサル会社によって得意分野や支援スタイルが異なるため、自社の課題に合うサービスを選ぶことが重要です。Kaienのサービス内容を知りたい方は、以下のページを参考にしてください。
Kaienの障害者雇用のコンサルティング
障害者雇用のミスマッチに関するよくある質問

最後に、障害者雇用のミスマッチに関するよくある質問を紹介します。
- 障害者雇用の定着支援を成功させるには?
- ミスマッチが続く場合、配置転換はどこまで可能?
- ミスマッチを理由に契約更新をしないのは問題?
障害者雇用の定着支援を成功させるには?
定着支援を成功させるポイントは、社内と外部支援機関が連携して支える体制をつくることです。ひとつの部署だけで抱え込まず、関係者が役割を分担しながら情報共有することで、問題を早期に察知しやすくなります。
支援体制の例としては、次のような役割分担があります。
- 人事担当者:合理的配慮の調整、社内教育、面談の設計
- 現場の上司・同僚:日常の声かけ、業務調整、些細な変化への気付き
- 外部支援機関:専門的助言、メンタル面のフォロー
定着支援における連携の具体例は、以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。
■【定着支援の秘訣】人事と現場、支援機関が障害者雇用でどう連携するか?
ミスマッチが続く場合、配置転換はどこまで可能?
ミスマッチが続く場合は、配置転換を検討することは十分に可能です。別の部署や業務に移るだけで、ミスマッチが改善し、力を発揮できるようになるケースは珍しくありません。
配置転換を検討する際のポイントは次のとおりです。
- 本人の強みや興味が活かせる部署がないか柔軟に探索する
- 本人の意向を尊重し受け入れ先の部署とも事前に調整する
- 必要な配慮事項を共有し受入体制を整えておく
配置転換によって別の業務ならスムーズに働けたという事例は多く、適材適所を見直すことはミスマッチの解消に有効です。
ミスマッチを理由に契約更新をしないのは問題?
ミスマッチを理由に契約更新をしないのは、問題になる可能性があります。障害に起因するミスマッチであるにもかかわらず、企業が合理的配慮や改善策を十分に講じていなければ、障害者雇用促進法が禁止する不当な取扱いにあたる場合があります。
契約更新の判断をする前に、企業側が取るべき対応は次の通りです。
- 配置転換や業務内容の調整を検討する
- ジョブコーチや支援機関を活用し、改善策を試みる
- 面談を行い、本人の意向や困りごとを丁寧に確認する
勤務継続が難しい場合は、本人が納得できるよう丁寧に話し合うことが欠かせません。ミスマッチを理由に契約更新をしないと、企業の信頼を損ねるリスクもあります。
やむを得ず契約満了とする場合でも、ハローワークや就労支援機関と連携し、次の就労先探しをサポートするなど、最後まで誠実な対応を取ることが重要です。
障害者雇用のミスマッチを防ぎ、安心して働ける職場づくりを目指そう

障害者雇用のミスマッチは、採用前の丁寧な見極めと、入社後の継続的なフォローによって軽減できます。企業が特性に合わせた働き方を整えれば、障害のある社員も安心して能力を発揮し、長く活躍しやすくなります。
もし、「どう対応すればよいか迷っている」「自社だけでは改善が進まない」と感じる場面があれば、専門家に相談することで解決策が見えやすくなります。
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