海外における障害者雇用の状況|制度の違いなどを事例を交えて紹介

2021年に民間企業の法定雇用率が2.3%に引き上げられるなど、国内では障害者雇用の支援強化が進められています。海外でも、日本と同様に「障害者権利条約」の理念に基づいて、各国が法整備や制度構築を進めています。しかし、障害者支援に対する価値観や思想は国によって異なるため、制度概要や補助内容もさまざまです。

今回は、各国における障害者雇用の現状や考え方、制度の違いなどを解説します。

海外における障害者雇用の状況

2006年の国連総会では、障害者の人権や基本的自由の確保、尊厳の尊重を目的に、障害者の権利実現に向けた措置などについて定める「障害者権利条約」が採択されました。この条約は、日本を含む185の国や地域が締結しており(2022年6月時点)、条約の規定に従って措置を講じることなどが盛り込まれています。

日本では、2014年の同条約批准に先立ち、障害者基本法や障害者雇用促進法の改正、障害者総合支援法や障害者差別解消法の制定など、条約の精神を前提とした法整備が進められました。法定雇用率制度の導入により障害者雇用は順調に推進されているように見えますが、世界と比べると、公的支援が必ずしも十分とはいいきれません。

OECD(経済協力開発機構)のデータによれば、障害対策や雇用のために行われる「社会支出」とGDPの比率において、日本はOECD平均よりも一貫して低い値を示していることがわかっています。高い値を示すスウェーデンやフランスが27~28%程度であるのに対し、日本は18.7%に留まっており、OECD平均よりもやや下回る水準です。

「平成24年度 厚生労働白書」から抜粋した「公的社会支出(GDP比率)」の図表です。

引用:平成24年度 厚生労働白書

海外における障害者雇用の考え方の違い

日本では、障害者雇用促進法により「法定雇用率」の達成を義務付けています。日本政府は、これまで法定雇用率の段階的な引き上げや、対象となる障害者枠の拡大によって障害者雇用を推進してきました。日本以外にも、ドイツやフランス、韓国では法定雇用率制度を採用し、障害者雇用枠を確保しています。

一方で、アメリカやイギリス、スウェーデンなどでは「雇用義務という考え方が差別につながる」という考えから、法定雇用率制度を採用していません。これらの国では、障害者を区別するのではなく「特性や個性を持った人々の1人」という考え方が強く、本人の苦手な部分について支援や分担による補完で対応する方法をとっています。

海外の障害者雇用の制度について

それでは、海外では実際にどのような障害者雇用制度が運用されているのでしょうか。それぞれの国の制度概要を紹介します。

ドイツ

ドイツでは法定雇用率制度を導入しており、その割合は従業員20人以上の企業ごとに、全従業員の5%となっています。制度の対象者は、障害の程度を示す等級によって決められます。障害程度の判定は、0~100を10単位で区切った数値により判定され、障害程度が30以上の者が障害者雇用の対象となります。

日本の障害者雇用制度はドイツの制度を見本に設計されているため、日本と類似点が多いことも特徴です。例えば、民間企業から納付金を徴収し、それを原資として障害者雇用を実施する企業へ給付金を支給する制度、トライアル雇用への助成制度、法定雇用率を遵守しない企業への罰金刑などがあります。

フランス

フランスも同様に法定雇用率制度を導入しており、割合は従業員20名以上の事業所ごとに、全従業員の6%となっています。雇用の対象となるのは、障害者権利自立委員会(CDAPH)によって障害労働者の認定を受けた者のほか、障害者手帳保持者や各種年金受給者、戦争犠牲者遺族などです。障害労働者の認定について具体的な基準は設けられておらず、障害による生活への影響など個別事象を考慮して検討されます。

また、3年以上にわたり納付金以外の方法で雇用義務を果たしていない企業に対しては法定最低賃金時給の1,500倍の納付金が課せられるほか、公的機関の入札において参加拒否事由なるなど、より厳しい罰則が用意されている点も特徴です。

韓国

韓国では、1990年に「障害人雇用促進等に関する法律」が制定され、この中で法定雇用率制度を採用しています。政府部門と民間部門で法定雇用率は異なり、民間部門の雇用率は2012年に2.5%、2014年には2.7%と、段階的に引き上げられています。義務の対象となる事業所も拡大傾向にあり、法定雇用率の対象は常時50人以上を雇用する事業所、障害者雇用負担金の納付義務は常勤労働者100人以上の事業所となっています。

同法は日本の障害者雇用促進法を参考にしており、類似点が多く見られます。例えば、法定雇用率に満たない事業者へ障害者雇用負担金の納付を義務付ける制度や、特例子会社と同様に子会社の障害雇用人数を親会社にカウントできる制度などがあります。

アメリカ

アメリカでは、「障害を持つアメリカ人法(ADA)」において、週の労働時間が20時間以上かつ15人以上の従業員を雇用する事業者に対して、採用や昇進、職業訓練、労働条件など雇用における障害者差別を禁じています。しかし、障害者雇用に関する法律や支援制度などは特に存在せず、具体的な施策や法整備は各州がそれぞれ決定しているのが現状です。そのため、日本やドイツ、フランスのように法定雇用率や未達企業からの納付金といった制度はありません。

そもそも、アメリカでは「障害者雇用」という概念が浸透しておらず、障害者でも自身の特性やスキルを活かせる企業で面接を受けるのが一般的です。そのため、公的機関による就労支援制度はあまり確立しておらず、働くことが難しい障害者に対しては福祉サービスを用意しています。

イギリス

イギリスでは、1995年の「障害者差別禁止法(DDA)」制定に伴い、法定雇用率制度や障害者登録制度、指定職種制度などが廃止されました。この背景には、制度利用のメリットが薄く、登録障害者数が激減していたこと、法定雇用率の達成が努力義務であったため達成を目指す事業者がほとんどいなかったことなどがあげられます。

また、障害者も対象に含まれる公的な職業訓練制度がありますが、委託する民間企業に対して雇用に結びつく求職者を優先するよう圧力がかかっているため、障害者は敬遠されやすいのが現状です。このため、一般的な職業訓練が受けられない重度障害者に対しては、民間の全寮制訓練カレッジが設置されています。

このほか、地方自治体や民間団体のワークショップで保護雇用された障害者が民間企業などに派遣されて働く「援助付き就業」という制度が用意されています。

スウェーデン

法定雇用率制度を採用していないスウェーデンでは、雇用補助金や自治体など公共部門での保護雇用といったプログラムによって障害者の就労を支援しています。

中でも、世界の注目を集めるのが国営企業「サムハル」です。サムハルは、障害者だけでなくホームレスや移民など自力での就労が困難な人々が同一労働同一賃金で働けて、民間企業にステップアップすることを目的に設立されています。障害者に年金を支給するだけでなく、障害者自身が働いて納税することで、社会保障のコスト低下を図る仕組みです。

また、サムハルでは業務に必要な能力を16カテゴリーに区分し、それぞれを3段階で評価しているため、単調な作業を割り当てられるのではなく、それぞれの特性や能力を活かして働ける点も特徴です。

デンマーク

デンマークでは障害者に対する公的な定義がなく、生活を送るうえで支障となるハンディキャップを障害とみなしています。そのため法定雇用率制度は導入しておらず、均等な機会の提供や経済的支援などを障害者政策の柱にしています。

独自の制度としては、賃金の一部を自治体が補助し、民間企業や公共機関への障害者就労を促す「フレックス・ジョブ」があります。デンマークでは週37時間労働がフルタイム、30時間以下はパートタイムとみなされますが、フレックス・ジョブを利用すると、障害を理由にパートタイムでしか働けなくても、フルタイムとの賃金差分が自治体から支払われる仕組みです。

ほかにも、民間企業や公的機関、公立のリハビリ訓練所などで職業訓練や実習を受けつつ、リハビリ手当が支給される職業リハビリ訓練制度があります。

まとめ

日本では、障害者雇用を社会全体の課題と考え、民間企業に対しても一定割合での雇用を義務付けています。一方、海外では障害者雇用を別枠で用意することはかえって差別につながるという考えのもと、法定雇用率制度を導入していない国も少なくありません。障害者を区別せず「個性や特性を持った1人」としてとらえる海外の視点を参考にしつつ、障害者が自身の特性を活かして働ける環境を追求する姿勢が大切でしょう。

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