身体障害の制度についてわかりやすく解説|人事担当者向けに知っておきたいことも

ひとくちに「身体障害」といってもさまざまな種類があり、症状によって就業時の困りごとも異なります。

そこで今回は身体障害の概要や種類、受けられる支援・サービスだけでなく、身体障害者を雇用する際に知っておきたいことなどをご紹介します。

本記事を読めば、身体障害の基礎的な知識や身体障害者を雇用する際に知っておきたいことなどを理解できるようになり、身体障害者の就職や雇用に役立てられるでしょう。

身体障害とは?

身体障害とは、身体機能に何らかの障害が生じている状態のことです。また、身体障害者は次の身体障害者福祉法の定義に基づき、「身体障害者手帳」の交付を受けることができます。その上で、障害者総合支援法などによる福祉サービスを受給可能です。

<身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)>

第四条 この法律において、「身体障害者」とは、別表(※)に掲げる身体上の障害がある十

八歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。

​​引用元: 厚生労働省|障害者の範囲 (参考資料)

※別表に定められている障害の種類
①視覚障害、②聴覚又は平衡機能の障害、③音声機能、言語機能又はそしやく機能の障害、④肢体不自由、⑤内部障害

身体障害者手帳の等級について

身体障害者手帳の等級は、1級〜7級に分類されています。

障害の程度は等級が1級に近くほど重くなり、6級以上の障害には身体障害者手帳が交付される仕組みです。7級の障害のみは交付対象外ですが、7級の障害が2つ以上ある場合などの条件下では交付対象として認められる場合があります。

詳しい等級については以下を参考にしてください。

参考:身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)

身体障害者手帳のある方の仕事の支援・制度

身体障害者手帳のある方の仕事の支援・制度として、次の3つがあります。

就労継続支援A型就労継続支援B型就労移行支援
雇用契約の有無ありなしなし
利用料・報酬給料を支給利用料が必要なケースもあり工賃を支給利用料が必要なケースもあり年収に応じて利用料が必要
月額平均収入額81,645円16,507円
年齢制限18歳以上65歳未満18歳〜65歳未満
対象者①就労移行支援を利用したが、雇用契約に結びつかなかった人②特別支援学校を卒業して就職活動をしたが、雇用契約に結びつかなかった人③就労経験はあるが、現在は理由が合って難しい人①就労経験があり、年齢や体力面で一般企業の雇用が難しい人②50歳に達している者、障害基礎年金1級受給者③①及び②のどちらにも該当しておらず、就労移行支援などによる評価において、就労面に係る課題を把握されている利用希望者企業への一般就労を希望し、知識や能力の向上、実習、職場探しなどを通じて、適正に合う職場への就労が見込まれる障害者
利用期間なしなし2年(延長あり)
身体障害者手帳のある方の仕事の支援・制度一覧

就労継続支援(A型・B型)

就労継続支援とは、障害や病気によって就労が難しい人々を対象とした福祉サービスのことで、就職先の提供や知識・能力を向上させるための訓練を実施します。

就労継続支援は、A型とB型の2種類に分かれています。2つの大きな違いは、利用者と事業所とのあいだに雇用関係があるかどうかです。

就労継続支援A型は、原則として法律で定められている最低賃金以上の賃金を受け取って継続的に働きながら、一般就労を目指す仕組みです。利用者が請け負う業務は、事業所が企業から請けているため種類がたくさんあります。

一方、就労継続支援B型は、工賃として法律で定められている最低賃金を必ずしももらえるわけではありません。ただし、比較的簡単な作業内容が多く、雇用契約に縛られないことから自分のペースで働けます。

就労移行支援

就労移行支援とは、障害福祉サービスのひとつで、対象者となる障害者が就職に必要なスキルを身につけるためにサポートします。

精神障害や発達障害、身体障害、知的障害、障害者総合支援法の対象疾病を持っている人向けにサービスが提供されています。基本的に賃金は発生しません。

企業側は就労移行支援を利用して、障害者雇用につなげることもできます。障害者の職業の安定を図ることを目的とした「障害者雇用促進法」に基づいて採用されるため、利用者は障害者でも働きやすい環境での就職を目指せることがメリットです。

身体障害の症状の種類

身体障害の症状には、次のような種類があります。それぞれに詳しく解説していきます。

  • 視覚障害
  • 聴覚障害・平衡機能障害
  • 音声機能・言語機能・そしゃく機能障害
  • 肢体不自由
  • 内部障害

視覚障害

視覚障害とは、先天的・後天的な原因によって視力や視野などに障害があり、目が見えなかったり目が見えにくかったりする状態になる障害のことです。

先天的な原因としては考えられるのは網膜色素変性症や先天性白内障、未熟児網膜症、眼球内に腫瘍ができる網膜細胞芽腫などです。後天的な原因としては、糖尿病による血管の損傷によって発生する網膜症や緑内障、加齢黄斑変性、脳障害による大脳へのダメージなどが考えられます。

視覚障害になると、次のような症状があらわれることがあります。

  • 両目の視力がそれぞれ0.1以下のもの
  • 一眼の視力が 0.02 以下、他眼の視力が 0.6 以下のもの 
  • 両眼の視野がそれぞれ 10 度以内のもの 
  • 両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの 

聴覚障害・平衡機能障害

聴覚障害とは、外耳・中耳(音を伝えるための部分)や内耳(音を感じ取るための部分)などに障害があり、耳が聞こえなかったり聞こえにくかったりする状態になる障害のことです。

平衡機能障害とは、耳や脳神経などに障害があり、起立や歩行などに支障が生まれている状態になる障害のことです。

また、耳を構成する要素である外耳、中耳、内耳のどこに障害があるかで、難聴の種類が分かれます。外耳または中耳であれば「伝音性難聴」、内耳であれば「感音性難聴」、伝音難聴と感音難聴の混合であれば「混合性難聴」です。

聴覚障害または平衡機能障害になると、次のような症状があらわれることがあります。

  • 両耳の聴力レベルがそれぞれ 70 デシベル以上のもの 
  • 一耳の聴力レベルが 90 デシベル以上、他耳の聴力レベルが 50 デシ ベル以上のもの

音声機能・言語機能・そしゃく機能障害

音声機能・言語機能とは、構音器官の障害などが原因で話せなかったり、音声・言語のみでの意思疎通がしにくかったりする状態になる障害のことです。音声障害・言語機能障害になると、等級に応じて次のような症状があらわれます。

  • 3級:音声を全く発することができない。または、発声しても言語機能を喪失した状態
  • 4級:音声や言語のみを使って意思疎通するのが難しい状態

そしゃく機能障害とは、食べ物を噛み砕いて食べる機能の障害が原因で、摂取する食料の内容や摂取方法に支障が出ている状態のことです。そしゃく機能障害になると、等級に応じて次のような症状があらわれます。

  • 3級:経管栄養以外に方法のないそしゃく・嚥下機能の障害があらわれている状態
  • 4級:著しいそしゃく・嚥下機能、または咬合異常によるそしゃく機能の著しい障害がある状態

肢体不自由

肢体不自由とは、上肢や下肢、体幹に障害があることで、手指(握る・なでる・摘むなど)の機能障害、下肢(歩く・登る・座るなど)の機能障害、運動機能などに障害が生じ、日常生活動作に制約を受けている状態になる障害のことです。奇形や機能不全などの先天的な要因や、脳疾患や四肢の切断などの後天的な要因が原因です。

肢体不自由になると、次のとおり症状に応じて呼び方が変わります。ただし、次の数値は機能障害の一面を表しているだけで、判定結果は機能障害全般を総合した上で定められます。

  • 両耳の聴力レベルがそれぞれ 70 デシベル以上のもの 
  • 一耳の聴力レベルが 90 デシベル以上、他耳の聴力レベルが 50 デシ ベル以上のもの

内部障害

内部障害とは、人間の生命の維持や日常生活に著しい影響を与える人体内部の器官などに障害がある状態になることです。種類に応じて、次のような症状があらわれます。

■心臓機能障害
心臓の疾患などによって機能が低下して心不全や心臓発作などが起こり、日常生活に支障が出ます。

■じん臓機能障害
じん臓の疾患などで機能が低下し、老廃物や余分な水分などを排泄できなくなります。

■呼吸器機能障害
肺などの呼吸器の機能低下によって息切れなどが生じ、呼吸が難しくなります。

■ぼうこう、または直腸の機能障害
排便・排尿などの機能が低下し、日常生活に制限を受けます。

■小腸の機能の障害
小腸の機能が低下して、口から摂取する食べ物や薬で栄養を維持できなくなります。

■ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって免疫機能が低下し、最終的には後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症します。

■肝臓機能障害
肝炎、肝硬変、肝臓がんなどが原因で肝臓機能が低下し、全身の倦怠感やむくみ、黄疸などの症状が現れやすくなります。

身体障害者手帳について

地域や事業者によって、身体障害者手帳で受けられるサービスは異なります。例えば、公営住宅に優先的に入居できたり福祉手当が支給されるだけでなく、公共交通機関や公共施設の利用料が割引されたりします。

身体障害者手帳のある方が受けられる支援・サービス

身体障害者手帳を持つ方が受けられる支援・サービスは次のとおりです。日常生活を送る上で移動中やコミュニティ内で困りごとが発生しても、支援機関や福祉サービスなどを利用できるメリットがあります。

<経済的なサービス・制度>
■障害年金
病気やケガなどで日常生活に著しい制限を受ける場合に受け取れる年金制度です。受給要件を満たすことで、障害基礎年金や障害厚生年金が受け取れます。

■更生医療
日常生活をより過ごしやすくするために、身体障害者の障害を除去・軽減するための手術などの治療にかかる費用(自立支援医療費)に対して支給される制度です。

■日常生活用具/補装具の交付
日常生活を送る上で必要となる用具や補装具を給付(または貸与)する制度です。

<日常生活のサポート>
■自立訓練(機能訓練)
生活にまつわる相談や理学療法士などによるリハビリテーションなどを通じて、障害者が日常生活を送りやすくなるように支援するサービスです。

■相談支援事業所
本人の希望や状況に合わせて福祉サービスや人をつなげ、地域とのよりよい関係を築いて自立した日常生活や社会生活に向けて支援するサービスです。

■生活介護
介護をいつも必要とする人に向けて、入浴や排せつ、食事など日常活動をサポートするサービスです。

詳しくは、以下の公的機関の記事を参考にしてください。

参考;障害福祉サービスの内容 |厚生労働省

身体障害者を雇用する際に知っておきたいこと

身体障害者を雇用する際に知っておきたいことは、次のとおりです。それぞれの内容を解説していきます。

  • 職場環境を見直す
  • 障害者雇用への社内理解を促進する

職場環境を見直す

身体障害者を雇用する際に知っておきたいことの1つ目は、職場環境を見直すことです。

障害ごとに異なる特性があるため、配慮すべきことが異なります。特性に応じて通勤に配慮したり、障害の特性に配慮したマニュアルを作成したりするなどをするといいでしょう。

また、障害者に移動面で困難をもたらす建物や通路などの箇所をバリアフリーにするだけでなく、障害の有無に関係なく必要な情報が平等に得られるように「情報アクセシビリティ」の向上を目指すことが求められます。情報アクセシビリティとは、サービスの提供方法を工夫したりすることで、情報を受け取りにくい障害者でも情報を不自由なく受け取れるようにすることです。

そのようにして職場環境を見直した上で、障害者に適切な配慮ができているかどうかを常に確認していきます。

<障害ごとの具体的な対策>

障害の種類具体的な対策
視覚障害視覚障害の人に向けたブラウザ・読み上げ機能などの導入、など
聴覚障害 または 平衡機能障害業務指示や連絡のときに筆談やメールを利用する
危険箇所や危険の発生を視覚で確認できるようにする、など
音声機能、言語機能 または そしゃく機能障害音声機能障害の人とは静かな場所で会話し、ゆっくりと話しかけることで落ち着いて話せるようにする、など
肢体不自由通路の整頓する
作業座席の配置を工夫する
手すりをつける
スロープを設置する、など
内部障害心臓機能障害(心臓ペースメーカーを使用)の場合は、なるべく電波から離れた場所で仕事ができるようにする、など
障害ごとの具体的な対策一覧

また、職業リハビリテーションを導入する方法もあります。職業リハビリテーションとは障害者であるがゆえに就職や就労の維持が難しいとき、職業を通じた社会参加と自己実現、経済的自立の機会をつくりだしていくサービスです。

職業相談や職業訓練などの各段階で、専門機関と連携して障害者の職業生活をサポートし、障害者も働きやすい職場づくりを支援します。

改正障害者雇用促進法が施行されたことで、事業者には「合理的配慮」の提供が義務付けられています。合理的配慮とは、障害者一人ひとりによって異なる困りごとに配慮をしていくことです。

事業者は障害者本人や周りと相談しながら、本人の特性や職場の状況を考慮した上で、どんな配慮をどう導入すれば過度な負担がなく困りごとを解消できるか決めていきます。

合理的配慮については、以下の記事で詳しく解説しています。

障害者雇用への社内理解を促進する

身体障害者を雇用する際に知っておきたいことの2つ目は、障害者雇用への社内理解を促進することです。

障害者雇用について、経営者や人事担当者、現場で働く従業員の全員が深く理解することが求められます。

例えば、障害への正しい理解や接し方などを学ぶために社内研修を実施したり、障害者雇用に対する偏った思い込みを解消するために支援機関などから職場体験実習を受け入れたりできるといいでしょう。

身体障害者の人の雇用する方法

身体障害者を雇用する方法として、自社ホームページ内での募集や知り合いの紹介、障害者職業訓練校との連携、「就労移行支援事業」や「就労継続支援事業」などの障害者就職支援施設との連携などが考えられます。

また、障害者雇用を扱う人材紹介会社を利用するのも手です。人材紹介会社の多くは成果報酬型で、採用者が決まらなかった場合は費用がかかりません。採用活動の一部をサポートしてくれる事業者もあります。

身体障害者を積極的に採用する事業者が多く、候補者の確保が難しいことです。また、人材紹介会社から採用した際には採用決定時に紹介手数料として理論年収の30~35%程度の費用が発生することが一般的です。

まとめ

身体障害の定義や制度について、人事担当者が知っておきたいことも踏まえてご紹介しました。身体障害の症状はさまざまで、症状別に求められる職場での対策も異なります。身体障害がある人も働きやすい職場づくりを目指し、障害者雇用につなげられるといいでしょう。

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