エクイティ(Equity)とは?ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)との関係を解説

「DE&Iという言葉を目にする機会が増えたけれど、D&Iとはどう違うのだろう?」

「DE&IのE(エクイティ)の意味が、漠然としていてよく分からない」

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みについて、単にD&Iではなく、新たにE(エクイティ)を加え、DE&Iとして表記する企業・団体が徐々に増えています。エクイティは公平性を意味する言葉ですが、具体的にはどのような違い・新規性があるのでしょうか。

この記事ではエクイティとDE&Iを具体的に解説し、実践事例を紹介します。自社の障害者雇用でDE&Iを推進したい人事担当者の方は、この記事をお役立てください。

DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは?

DE&I(ダイバーシティ、エクイティアンドインクルージョン)とは、「D:ダイバーシティ」「E:エクイティ」「I:インクルージョン」の3つの要素で構成された、社会の多様性、公平・公正性、包摂性を高める対策のことです。

<DE&Iの3つの要素の意味>

用語意味説明
ダイバーシティ(Diversity)多様性異なる性別や国籍、障害の有無などの違いを持つ人々が集団の中に共存していること
エクイティ(Equity)公平性あらゆる人が公平に情報や機会、リソースにアクセスできるようにすること
インクルージョン(Inclusion)包摂性様々な人が一体感を持って組織・社会に参画すること

ダイバーシティ&インクルージョンは、しばしばダンスパーティにたとえられます。

ダイバーシティとはパーティに招待されること。インクルージョンは、そこでダンスに誘われること、です。しかし、仮にダンスパーティに招待されたとしても、子育て中の人には行きたくてもいけないような時間帯であるため参加が叶わない場合があるかもしれません。また、経済的な事情でダンスパーティに相応しいドレスを持っていないため、参加をあきらめる人がいるかもしれません。このようなことを想定し、開催する時間帯を広くとったり、ドレスを貸し出したりすることで、より多くの人にダンスパーティに参加する機会を広げることが、エクイティの概念です。

エクイティ(Equity)とは?

図引用:【図表でわかる!】発達障害 × 合理的配慮 |「タブレットの利用はズルい」? 合理的配慮を”不平等”だと感じる人へ

エクイティは「公平性」という意味です。個人間の差を考慮してそれぞれに合った支援を行い、みんなが公平に機会や情報を得られるようにすることを示します。

エクイティはイコーリティ(Equality:平等)と同じようなものだと思われがちですが、両者には違いがあります。

イコーリティは全員に同等のサポートを行うことであり、障害の有無のような「一人ひとりのスタート地点の差」については考慮されません。そのため、個人間の差を埋めることができずに、機会や情報などを得る機会に差が出てしまうのです。

一方で、エクイティは個々の状態に応じてサポートの手厚さを調整し、機会や情報などをみんなが公平に入手し得る環境を作り出すものです。

D&IからDE&Iへシフトした背景

従来、社会や組織の成長のためにD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)という概念が重視されてきました。しかし、近年ではD&IにE「エクイティ」を加えたDE&Iへとシフトする企業が増えています。

DE&Iが普及してきた背景のひとつが、アメリカで人種・民族的マイノリティへの不平等が深刻な社会問題になっていることです。

アメリカ国内における人種・民族的マイノリティへの不平等が、過去30年間で合計約23兆ドルの経済的損失につながったとする研究論文が、2021年に学術誌「Brookings Papers on Economic Activity」に発表されました。

参照:「経済的不平等が全体の繁栄を妨げている…アメリカは30年で23兆ドルを失った」|BUSINESS INSIDER」

人種や民族などの違いによる不公平を是正して誰もに等しく機会を与え、多様性の中で一体感を持って企業の成長を目指す。というDE&Iの普及が、アメリカでは経営戦略上の重要課題となりつつあるのです。

DE&Iを障害者雇用で推進するために必要な考え方

DE&Iの推進は、障害雇用の場面でも重要です。日本財団が2021年に開催した「障害とビジネスフォーラム -ESG投資と障害者インクルーシブな企業の価値-」では、登壇者たちは障害者インクルージョンを推進するうえで次のような意見を述べました。

<障害者雇用に必要な考え方>

  • 障害者と健常者は何も変わらないという価値観を持ち、誰もが働きがいを感じられる仕事や場所を作ることが大切である。
  • 無意識に形成される障害へのバイアス(偏向・先入観)を外すことが、ビジネスリーダーには求められる。
  • 障害に対して無関心な状態だった社員たちが「自分にも関わりのあること」と認識するような仕掛けづくりをできれば、組織内でのDE&Iの浸透につながる。

参照:企業の持続的な成長の鍵を握るのは「インクルージョン」。多様な人が活躍できる組織づくりとは|日本財団

障害へのバイアスについて詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。

アンコンシャス・バイアスとは?事例と取り組みをわかりやすく紹介

DE&Iの企業の取り組み事例

障害者雇用においてDE&Iに取り組む企業の事例を紹介します。

EY Japan

DE&Iの活動に関する、世界的なリーディングカンパニーであるEYの日本法人、EY Japanでは、障害のある若者に対するキャリアの機会提供の場として、「EY Diverse Ability Internship Program」という特別なプログラムを行っています。

” EYは150カ国以上に事業を展開するプロフェッショナル・サービス・ネットワークであり、日本でも監査、税務、コンサルティングなどのサービスを提供しています。「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」をパーパス(存在意義)とするEYでは、障害を「Disability(能力が損なわれている)」ではなく、「Diverse Ability(多様な能力がある)」と捉え、適切な環境があれば特別な能力として発揮されると考えています。
障害のある若者の多くは通学だけで精いっぱいであったり、障害を理由にアルバイトをさせてもらえないなど、自分の将来のキャリアについて具体的に考える機会や経験を積むことが難しいのが現状です。EY Diverse Ability Internship Program(DAP)は、障害を持つ次世代の方々に公認会計士や税理士、コンサルタントなどの高度専門職を目指してもらうために、EY Japanと発達障害の就労支援機関Kaienが共同開発したプログラムです。 ”

参考元:EY Diverse Ability Internship Program – 発達・精神障がいのある学生・若者向けの会計士・税理士・コンサルタントのキャリア体験インターン

ANA

ANAグループでは障害を持つ900名以上の社員が、安全運航やお客様サービスなど多種多様な職種で活躍しています(2022年3月時点)。障害者雇用の推進のためANA人事部内には「グループ障がい者雇用推進室」が設置されており、障害者採用合同面接会の実施や「ANAグループ障がい者採用サイト」からの積極的な情報発信を行っています。

また、ANAグループがDE&Iを推進するうえで重要な役割を果たしているのが、人事担当者と障害のある社員らによって策定された「3万6千人のスタート」という行動規範です。障害者雇用が「特別」なことではないのだということを一人ひとりの社員が熟知し、障害によって生じる不便さの解消に向けて努力することが明記されています。
参考元:DEI(持続的成長を担うひとづくり) | サステナビリティ | ANAグループ企業情報

まとめ

エクイティとは公平性のことであり、一人ひとりの状態に応じてサポートの手厚さを調整し、障害の有無や性別、国籍などの違いによる不公平をを生み出さないようにする取り組みを指します。

社員一人ひとりが障害者への無理解や先入観をなくし、障害への適切なサポートを行ったうえで全社員が一丸となって組織の発展を目指していくことが、DE&Iの推進につながります。

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この記事を書いた人

大野順平

株式会社Kaien 就労支援事業部 法人サービス担当
ゼネラルマネージャー / シニアディレクター

2014年Kaien入社。採用支援、定着支援、社内啓発など、これまで20社以上の精神・発達障害人材の雇用推進プロジェクトに参画。

論文寄稿 :

月刊精神科「就労支援におけるneurodiversity」(2023年9月,科学評論社)

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