地域障害者職業センターとは?企業が利用するために知っておきたいこと

障害者雇用が活性化する中、地域障害者職業センターを活用する重要性も高まっています。障害者雇用は、障害の特性や職場で配慮すべき点などを理解したうえで進めなければなりません。地域障害者職業センターなどの支援を受けることで、企業と障害を持つ方双方の負担を減らすことが可能です。

本記事では、地域障害者職業センターの概要や具体的に受けられる支援などを解説します。地域障害者職業センターを利用するための基礎知識が得られる内容なので、ぜひ障害者雇用の推進にお役立てください。

地域障害者職業センターとは?役割について

地域障害者職業センターは、ハローワークと連携し、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。全国47都道府県に設置されています。「独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構」が運営しており、障害を持つ方々の社会参加を支援する重要な役割を担っています。

参考記事:【企業向け】高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)とは?

例えば、パソコンを使った仕事を希望する障害者の方に、パソコンスキル習得のための訓練を提供したり、労働習慣の体得や、コミュニケーション能力の向上などのサポートも行っています。

また、障害者の雇用に積極的な事業主の支援もしています。具体的には、ジョブコーチの派遣や障害特性を踏まえた助言などです。

このように、地域障害者職業センターは、障害者の方々が仕事を通じて自立し、社会参加を果たすための大切な施設となっています。

地域障害者職業センターの利用対象者

地域障害者職業センターの利用対象者は「障害のある人」「障害者雇用に携わる人」「地域の障害者支援に携わる人」です。具体的な内容は以下の表をご覧ください。

利用できる方具体的な内容
障害がある方・療育手帳、身体障害者手帳、精神福祉保健手帳を持つ方
・難病を抱える方
・その他、診断書がある、障害者手帳の申請中の方を含む、障害があると認められる人
障害者雇用に携わる方・障害者を雇用している事業主の方・企業の人事担当者の方
地域の障害者支援に携わる方・障害がある人を支援する福祉・医療・教育関係者

このように、障害者雇用に関わる幅広い方が利用できます。

地域障害者職業センターで企業が受けられるサービス

地域障害者職業センターで企業が受けられるサービスは以下の7つです。

  • はじめて障害者の雇用に取り組む企業への支援
  • セミナーの実施
  • 企業内研修のサポート
  • 職場定着のサポート
  • ジョブコーチ支援
  • リワーク支援
  • 高次脳機能障害がある方の職場復帰支援

それぞれ、高齢者や障害者、求職者の雇用に関する支援を行う「東京障害者職業センター(JEED)」の内容を基に解説します。

はじめて障害者の雇用に取り組む企業への支援

障害者の就労意欲が高まる現在、企業のCSR(企業の社会的責任)への注目も増しています。これらの背景により、障害者雇用への取り組みが活発化し、進展を見せています。

地域障害者職業センターは、新たに障害者雇用に挑戦する企業が抱える不明な点や心配事など、以下、それぞれのステップに応じた支援を行っている施設です。

  • 障害者雇用の深い理解
  • 職務の選定
  • 受け入れ体制の整備
  • 採用活動
  • 職場の定着

障害者の職場定着にいたるまで、さまざまな支援が受けられます。

セミナーの実施

地域障害者職業センターでは、企業の人事や労務担当者、障害者雇用の担当者に向けて、障害者雇用についての理解を深める定期セミナーを実施しています。これまでの取組事例や参加企業同士の情報交換もできるため、自社に活かせる学びが得られるセミナーです。

参加をおすすめできる方としては、担当者になったものの、社内に障害者雇用の知見がなく困っている方や、同業他社の取り組みからヒントを得たい方、実際に障害者を雇用していながら管理方法に悩まれている方などが挙げられます。

企業内研修のサポート

企業ごとのニーズに応じて、障害者雇用についての社内研修の計画や実施に支援を行うことも、地域障害者職業センターの取り組みのひとつです。その一環として、研修講師の派遣を行っています。

障害者雇用に対する同僚の心配を和らげたい方や、障害の特徴や必要な配慮について学びたい方の要望に講師が対応してくれます。無料で依頼でき、啓発用の資料を貸し出すなどのサポートもあるので気軽に参加できるでしょう。

研修実施までの流れは以下の通りです。

  • 問い合わせ
  • ニーズの確認
  • 研修の打ち合わせ
  • 研修の実施

依頼できる研修内容の例としては、ダイバーシティ経営に関することや採用活動、受け入れ体制づくりに関すること、職場環境の設定方法に関することなどがあり、その他さまざまな研修を依頼できます。

職場定着のサポート

地域障害者職業センターでは、障害のある方が職場に定着できるように、作業面やコミュニケーション面、体調面、ルールやマナー面に関する相談を受け付け、解決への支援を行っています。

例えば、以下のような相談内容が挙げられます。

  • 指示通りの作業ができない
  • 複雑な作業で混乱してしまう
  • 臨機応変な対応が苦手
  • 解釈の違いによりルールを守れない

このような相談を、以下の流れで支援します。

  • ニーズを把握する
  • 原因分析とアセスメントを行う
  • 支援方針を決定する
  • 職場定着の支援を実施する

以上の流れで支援を行い、場合によっては医療機関や支援機関の担当者と連携しながら、次に紹介するジョブコーチ支援も行います。

ジョブコーチ支援

ジョブコーチ支援は、ジョブコーチが職場へ足を運び、障害を持つ方と企業の両方へ、公平な視点から個別かつ具体的な支援を提供します。障害者本人と企業の要望に応じてカスタマイズされた内容になっており、3ヶ月程度を目安に支援をする内容です。

具体的な支援体制としては、障害者カウンセラーとジョブコーチがチームになり支援を実施します。地域障害者職業センターに属する「配置型ジョブコーチ」や社会福祉法人等に属する「訪問型ジョブコーチ」、企業に所属する「企業在籍型ジョブコーチ」などがあり、依頼する企業に応じて必要な対応を行います。

企業のニーズの確認からフォローアップまでしてくれるため、障害者の職場定着に効果的な支援といえるでしょう。

さらに詳しいジョブコーチに関する情報は、以下の記事をご覧ください。

リワーク支援

リワーク支援とは、メンタルヘルス不調により休職している方の、職場復帰を支援するものです。休職者本人への各種講座の提供や、企業担当者への復帰受け入れに関するアドバイスなどを行っています。

具体的な支援の仕方としては、休職中の社員や企業の担当者、主治医が協力し、活動内容やスケジュールを調整する「職場復帰のコーディネート」を行い、慎重に進めていきます。

例えば、生活リズムの改善や体調・集中力の確認、コミュニケーション技法の習得などを実施し、職場復帰を目指す内容です。

支援の内容を詳しく知りたい方は、説明会を開催しているので参加してみるとよいでしょう。

休職を申し出たうつ病の部下への対応については、以下の記事をご覧ください。

高次脳機能障害がある方の職場復帰支援

地域障害者職業センターでは、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血、交通事故などにより、脳に損傷を受けた高次脳機能障害のある方の職場復帰も支援しています。具体的には、高次脳機能障害の特徴である、記憶障害や注意障害、遂行機能障害などの特性の理解や復帰に向けた計画の策定、雇用管理に関する支援などです。

例えば、休職者の特性に基づいた職業リハビリテーション計画を立てたり、職場環境で配慮すべき点を伝達したりなどが挙げられます。

復帰後のフォローアップまで実施しているので、高次脳機能障害がある方の職場復帰に有用な支援といえるでしょう。

地域障害者職業センター一覧

地域障害者職業センターは全国各地にあります。以下は、各エリアのセンターの一部をまとめたものです。

施設名所在地問い合わせ先
北海道障害者職業センター〒001-0024北海道札幌市北区北二十四条西5-1-1札幌サンプラザ5階TEL:011-747-8231FAX:011-747-8134
東京障害者職業センター〒110-0015東京都台東区東上野4-27-3上野トーセイビル3階TEL:03-6673-3938FAX:03-6673-3948
神奈川障害者職業センター〒252-0315神奈川県相模原市南区桜台13-1TEL:042-745-3131FAX:042-742-5789
京都障害者職業センター〒600-8235京都府京都市下京区西洞院通塩小路下る東油小路町803TEL:075-341-2666FAX:075-341-2678
大阪障害者職業センター〒541-0056大阪府大阪市中央区久太郎町2-4-11クラボウアネックスビル4階TEL:06-6261-7005FAX:06-6261-7066
福岡障害者職業センター〒810-0042福岡県福岡市中央区赤坂1-6-19ワークプラザ赤坂5階TEL:092-752-5801FAX:092-752-5751
沖縄障害者職業センター〒900-0006沖縄県那覇市おもろまち1-3-25沖縄職業総合庁舎5階TEL:098-861-1254FAX:098-861-1116

地域障害者職業センターを利用する際は、まず上記の施設に問い合わせてみましょう。その他の地域障害者職業センターは「高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」をご覧ください。

地域障害者職業センターに関するよくある質問

はじめて地域障害者職業センターを利用する方は、支援の種類や申込みめる具体的な内容など、さまざまな疑問を持つでしょう。ここでは、人事担当者の方が抱く、よくある疑問を紹介します。

障害者雇用を進める際に障害者職業センターを利用している障害者の紹介は可能?

地域障害者職業センターでは、求職中の障害者の方を直接紹介することはできません。多様な援護制度を利用できる、ハローワークの紹介を通じて障害者を採用することが推奨されています。また、地域障害者職業センターは、職業紹介権を持っていないので、利用者を直接紹介することはできません。

障害者就業・生活支援センターとの違いは?

地域障害者職業センターは、障害を持つ方の職業リハビリテーションが主な支援内容ですが、生活支援センターは、就職を希望する障害を持つ方の就業や生活のサポートを行う施設です。

具体的な違いは以下の表をご覧ください。

地域障害者職業センター障害者就業・生活支援センター
支援の対象範囲障害を持つ本人・事業主障害を持つ方のみ
支援の内容職業リハビリテーションがメイン就業や生活面の支援
所在地各都道府県に1ヶ所以上設置各市町村単位で設置

より専門的な支援を受けるには、地域障害者職業センターの方が適しています。

多数の店舗で障害者雇用を考えている場合、他都府県の障害者職業センターに相談しなければいけませんか?

全国に設置された障害者職業センターは、高齢・障害・求職者雇用支援機構により運営されています。他地域での障害者雇用を考える際、該当地域のセンターと連携し、適切な調整を進めます。例えば、東京都と埼玉県に店舗がある場合、同じ事業主だとしても、それぞれの都道府県にある地域障害者職業センターを利用しなければなりません。適切な支援を受けるためにも、それぞれの店舗の最寄りのセンターを利用することをおすすめします。

まとめ

地域障害者職業センターは、障害者の職業リハビリテーションを中心に、さまざまな障害者雇用に関する支援を実施している施設です。基礎的な相談からセミナー、企業内研修、職場で支援をしてくれるジョブコーチ支援など、障害を持つ方の職場復帰や職場定着に向け、あらゆる支援を行っています。

これから障害者雇用を推進したい方や、障害者雇用をしているが、課題が多いと感じる企業さまは、地域障害者職業センターの活用を検討してみるとよいでしょう。

障害者雇用を支援するKaienでは、障害を持つ方の就労移行支援サービスを行っている会社です。また、障害者雇用に関するセミナーを多様な切り口で実施しています。無料のオンラインセミナーになっているので、ぜひお気軽にご参加ください。

この記事を書いた人

大野順平

株式会社Kaien 就労支援事業部 法人サービス担当
ゼネラルマネージャー / シニアディレクター

2014年Kaien入社。採用支援、定着支援、社内啓発など、これまで20社以上の精神・発達障害人材の雇用推進プロジェクトに参画。

論文寄稿 :

月刊精神科「就労支援におけるneurodiversity」(2023年9月,科学評論社)

取材対応 :

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